乳牛の産乳量の違いが糞尿への窒素排泄に及ぼす影響

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要約

産乳量と関係がある乳窒素量及び接種窒素量の違いが糞尿への窒素排泄に及ぼす影響を検討した結果,乳窒素量及び接種窒素量が増加するにつれて,乳窒素量及び接種窒素量当りの糞尿総窒素の排泄量は低下する傾向が認められる。

  • 担当:北海道農業試験場・畜産部・栄養生理研究室
  • 連絡先:011-857-9269
  • 部会名:畜産・草地
  • 専門:飼育管理
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

我が国では,1992年度時点で68万tの糞尿窒素量(うち乳牛では16万t)の排泄が試算されているが,窒素の利用率を高め,環境負荷を軽減させるためには,草地畜産の振興,畜産廃棄物の堆肥化のほかに,家畜の窒素利用効率を向上させ,乳生産量を確保しつつ排泄窒素量の軽減を図ることが必要である。そこで,53例の窒素出納試験を行い,乳窒素量(産乳量)の違いが糞尿への窒素排泄に及ぼす影響について検討した。

成果の内容・特徴

  • 窒素出納試験に用いた給与飼料条件は,4%乳脂補正乳量(4%FCM)が28kg未満では乾物粗飼料率50%~70%,TDN63~73%,CP11~15%,OCW33~54%,4%FCMが28kg以上では乾物粗飼料率39~41%,TDN66~77%,CP13~19%,OCW31~44%である。泌乳期を通しての乾物摂取量は15~27kg,乳量15~52kgであり,糞量,糞水分率,糞窒素量,尿量,尿窒素量は表1のとおりである。
  • 摂取窒素量及び乳窒素量当りの糞窒素量及び尿窒素量は表2のとおりである。
  • 乳窒素量が増加するほど,乳窒素量当りの糞窒素量と尿窒素量は低下する傾向を示す(図1)。
  • 乳量(M,kg)あるいは乳窒素量(MN,g)からの糞尿総窒素量(FUN,g)の推定式は次のとおりである。 FUN=43.01×M0.5215 R2=0.472 あるいは FUN=9.79×MN0.6497 R2=0.564
  • 接種窒素量が増加するほど,接種窒素量当りの糞窒素量は低下傾向を,同尿窒素量は増加傾向を示すが,同糞尿総窒素量では低下傾向を示す(図2)。接種窒素量当りの糞尿総窒素量は50%以下にはならないものと推定する。

成果の活用面・留意点

  • 乳牛の排泄窒素量の環境負荷量や各種処理施設容量の算定のための基礎数値を与える。
  • 図1 の乳窒素量を乳量,4%FCMでおきかえてもその傾向は変わらない。

具体的データ

表1 泌乳牛の1日当たりの糞尿量および窒素量 表2 摂取窒素量および乳窒素量当たり糞、尿の各窒素量

図1 乳窒素量と排泄窒素量/乳窒素量との関係

図2 摂取窒素量と排泄窒素量/摂取窒素量との関係

その他

  • 研究課題名:乳用牛の糞尿中窒素排泄量に及ぼす要因の解明と制御技術の確立
  • 予算区分 :一般別枠研究(家畜排泄物)
  • 研究期間 :平成6年度(平成6年~8年)
  • 発表論文等:未発表