反復DNAの効率的増幅を目的としたレーザー微細操作による染色体標本の作成法

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要約

レーザー微細操作により得られたギムザ染色染色体からのDNAの増幅に固定液中での標本の保存は問題なく、また、染色による保存性の低下も脱色により回復する。本方法により1本の染色体を残した標本から反復DNAの増幅が再現よく行われる。

  • 担当:北海道農業試験場・畜産部・家畜育種研究室
  • 連絡先:011-857-9270
  • 部会名:畜産・草地
  • 専門:育種
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

有用遺伝子を効率的に解析するため、マイクロクローニング手法による簡便な染色体特異的ライブラリーの作成法の開発が必要とされている。そこで、顕微鏡下でレーザーにより染色体の不要部分を消去し特定の染色体を残す方法であるレーザー微細操作法を用いて、標本的作成法が染色体からDNA増幅に与える影響を検討し、少数染色体からのDNAを増幅するための標本作成法の開発を試みた。

成果の内容・特徴

  • ウシ血液を培養後、染色体試料を薄膜上で標本作成した。ギムザ染色後、薄膜上においてレーザー微細操作により得られた少数染色体からDNAを増幅するための、標本の固定法・保存法の検討を行った(表1)。
  • メタノールと酢酸の混合比については影響がなく、1ヵ月の保存でもDNA増幅に影響がみられない。
  • ギムザ染色を行った標本については、数日の保存でDNAの増幅が悪くなったが、メタノールで脱染色体をした後で保存すると保存性が回復する。
  • 本法で作成した標本に対するレーザー微細操作は容易で、一核板から特定の染色体を選択して、他の染色体を処理するための時間は10分から20分程度である(図1)。
  • 本法で作成した標本からPCR法を用いて、薄膜上のY染色体1本からY染色体特異的反復DNAの増幅を行うことができる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 反復DNA配列の増幅については、ネガティブコントロールからの増幅もみられるが比較的再現性良く行え、多くの染色体に存在する類似のDNA配列の染色体間比較に用いることが可能である。
  • シングルコピーもしくは小コピー数のDNAの増幅については、プライマーの選択を始めとする増幅過程に関する検討が必要である。
  • 染色体の微細操作は農林水産省農業生物資源研究所の細胞操作用ワークステーション(ACAS470、メリディアン)用いて行った。

具体的データ

表1 染色体処理各段階における保存のDNA増幅に対する影響

表2 Y染色体1本からのDNA回収率とネガティブコントロールからの回収率の差

図1 核板からの染色体微細操作

その他

  • 研究課題名:マイクロクローニング手法による染色体特異的ライブラリーの作成
  • 予算区分 :バイテク(動物DNA)
  • 研究期間 :平成5年度(平成4~5年度)
  • 発表論文等:染色体研究における新手法の開発11.ウシY染色体からのDNA増幅
                      日本畜産学会第87回大会 講演要旨、P80、(1993)