戻交雑によるアカクローバとジグザグクローバ雑種植物の稔性向上

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要約

ジグザグクローバとアカクローバの種間雑種胚を培養中にコルヒチン処理して染色体増加し、それにアカクローバを戻交雑することにより花粉稔性18%、種子稔性20%の戻交雑第3世代の個体群を得た。戻交雑後代は、永続性に寄与すると考えられる地下茎の発生や地中での冠根部形成をする。

  • 担当:北海道農業試験場・草地部・マメ科牧草育種研究室
  • 連絡先:011-857-9272
  • 部会名:畜産・草地
  • 専門:育種
  • 対象:牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

野生種ジグザグクローバのもつ地下茎による繁殖能力を取り込むことにより、短年生であるアカクローバの永続性を向上させることを目的とする。これまでに、胚培養による雑種植物の作出と、雑種胚由来カルスにコルヒチン処理し複倍数体を得ることに成功している。しかし、この複倍数体に花粉稔性は無かった。染色体倍加による稔性向上の効果が見られなかった理由の一つをカルス培養期間中の変異と考え、培養中の胚をカルス化することなくコルヒチンを処理して複倍数体をつくり、これにアカクローバを戻交雑して稔性向上を図る。

成果の内容・特徴

  • LIH培地上でコルヒチン処理した雑種胚から染色体倍加した1個体を得た(表1)。この個体の花粉稔性は1.1%である。
  • 四倍体アカクローバによる戻交雑第1代の花粉稔性は2.0%、種子稔性は0%、第2代の花粉稔性は9.8%、種子稔性は9.2%である。第3代の花粉稔性は18.0%、種子稔性は20.1%となり、戻交雑の世代とともに向上する(図1)。
  • 雑種植物と戻交雑第1代は25%の個体で横に伸びる地下茎を発生し、その他の個体では上に伸びる地下茎(写真)を発生し、冠根部を地中に形成する。これらの形質はアカクローバには無いもので永続性の向上に寄与すると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • これらの戻交雑後代植物体はアカクローバ永続性改善のための素材育成に利用できる。
  • さらに稔性を向上させるためには戻交雑植物体の細胞質をジグザグクローバ由来のものからアカクローバのものに換えることが必要である。

具体的データ

表1 コルヒチン処理をした胚の数と染色体倍加した個体

図1 戻交雑世代と稔性回復

写真 戻交雑第1代の植物体

その他

  • 研究課題名:マメ科牧草近縁野生種の育種的利用
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(5~6年)
  • 発表論文等:Fertility and Morphology of the Chromosome-doubled Hybrid
                      Trifolium medium x T. pratense (Red Clover) and Backcross Progeny.
                      日本草地学会誌,(投稿中)