ジャガイモそうか病抵抗性の室内検定法の開発
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要約
ジャガイモそうか病の抵抗性検定に、抵抗性実生を選抜するための幼苗接種検定、及び抵抗性塊茎を選抜するための人工汚染土検定と萌芽茎接種検定の3種類の検定法を用いると、室内で簡易に交配実生から抵抗性個体の選抜が行える。これらの検定法は、北海道内に分布する菌群に適用できる。
- 担当:北海道農業試験場・生産環境部・病害研究室
- 連絡先:011-857-9277
- 部会名:生産環境・高収益畑作
- 専門:作物病害
- 対象:いも類
- 分類:研究
背景・ねらい
ばれいしょ生産においてジャガイモそうか病が大きな阻害要因となっており、実用的な抵抗性品種の育成が早急に求められている。抵抗性品種の育成は現在、汚染圃場での検定による抵抗性個体の選抜で行われているが、効率的な育種を行うには室内でも検定を行う必要がある。そこで、室内で実施できる簡易な抵抗性検定法の開発を図る。
成果の内容・特徴
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交配種子実生からの抵抗性個体の選抜に利用できる3種類の簡易な室内抵抗性検定法を開発した(図1)。
1) [幼病接種検定法] :交配種子からの抵抗性実生の選抜に用いる(表1)。温室内で育苗した播種20-25日後の苗令2.5-3.5の幼苗全体にそうか病菌液(胞子濃度1.0×10^7個/ml)を均一に噴霧したのち苗全体をポリエチレン袋に包み、25°Cの恒温器内に約4日間置き、茎葉に現れる壊死病徴を調査する。なお、発病は菌の接種濃度と苗令に影響されることから、検定にはこれらを一定にして行う必要がある。
2) [人工汚染土検定法] :抵抗性塊茎の選抜に用いる(表2)。堆肥入り滅菌土とバーミキュライト(2:1)の混合土(pH6以上)にそうか病菌液を入れて混和し、胞子濃度が約1.0×10^5個/gの汚染土壌を調整する。汚染土壌をポットに詰め、実生苗を移植あるいは塊茎を植え付けて温室内に置き、潅水を控えて塊茎を形成させ、約3ヵ月後に発病を調査する。
3) [萌芽茎接種検定法] :抵抗性塊茎の選抜に用いる(表3)。約18°Cの暗黒下に置いた塊茎から伸びた軟白萌芽茎を6~8cmの長さに切り取る。萌芽茎の上部に、そうか病菌液(胞子濃度1.0×10^7個/ml)に浸した幅約1cmのティッシュペーパーを巻き、ビーカー内の水に挿して、ビーカー全体をポリエチレン袋に包んで25°Cの恒温器内に置き、約4日後に塊死病徴を調査する。
- 上記の室内検定法はいずれも、北海道内に分布するそうか病菌の主要な菌群であるRF(-)、S(+)および(-)の3種類の菌群に適用できる。
成果の活用面・留意点
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汚染圃場を用いた現在の検定・選抜過程の一部に本室内検定法を用いることにより、実生からの抵抗性個体の選抜は効率化と精度向上が図れる。
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本室内検定法の利用にあたっては、対照として既存の羅病性及び抵抗性品種を供試することが望ましい。
具体的データ




その他
- 研究課題名:ジャガイモそうか病の抵抗性検定法の開発
- 予算区分 :総合開発(高収益畑作)
- 研究期間 :平成6年度(平成4年-6年)
- 協力分担 :北海道農試・ばれいしょ育種研
- 発表論文等:ジャガイモそうか病抵抗性の温室内検定法開発の試み.
日植病報 60巻6号:795-796,1994.