病原菌の繰り返し接種による土壌のテンサイ苗立枯病発病抑止性の誘導

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

テンサイ苗立枯病の土壌の抑止性は、菌体の繰り返し接種により誘導される。土壌の抑止性は死菌体によっては誘導されず、抑止土壌中では繰り返し接種をしても菌数が減少し、菌糸の生育は抑制される。

  • 担当:北海道農業試験場・畑作研究センター・環境制御研究チーム
  • 連絡先:011-857-9447
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:工芸作物類
  • 分類:研究

背景・ねらい

土壌病害には、連作あるいは激発後に衰退するものがあることが知られているが、生物的防除法を開発するためには、その衰退要因と環境条件を解明する必要がある。そこで、繰り返し接種によりテンサイ苗立枯病に対する土壌の抑止性を誘導し、その抑止機能を解明して、抑止因子の施用や抑止作用の増強により、発病を軽減する技術の開発に資する。

成果の内容・特徴

  • 土壌の抑止性は、テンサイ苗立枯病菌(Rhizoctonia solaniのAG2-2とAG4)の培養菌体を容積比1%濃度で2週間おきに5回繰り返し接種することにより誘導される。
  • 土壌の抑止性は、プロピレンオキサイドで殺菌した菌体の接種によっては誘導されない(表1)。
  • AG2-2とAG4に属する5菌株によって誘導した抑止土壌に、異なる菌株を相互に接種した場合、抑止性が認められ、土壌の抑止性に菌群特異性はない。
  • R.solaniの菌糸の伸びは、繰り返し接種土壌中で抑制される(図1)。このため、土壌中の菌糸の伸びは、抑止性の検定に利用できる可能性がある。
  • 土壌中のR.solaniの菌数は、繰り返し接種による接種源の累積にもかかわらず減少する(図2)。
  • 苗立枯病に対する繰り返し接種土壌の抑止性は、46~49°C付近の熱処理により弱まり、55°Cでほぼ消失する。この時、糸状菌数は49°C以上で減少したが、細菌数は60°Cまで無処理と差がなかった(図3)。これらのことから、繰り返し接種によって生じた抑止性には熱感受性の生物的な因子、特に糸状菌が関与していると考えられる。
  • 滅菌土で苗立枯病に対する抑止効果のある、TrichodermaおよびVerticillium菌が、繰り返し接種土壌から得られる。

成果の活用面・留意点

  • テンサイ苗立枯病の生物的防除法の開発に利用できる。
  • 抑止土壌は防除に直接的に利用はできない。
  • 繰り返し接種に用いる接種源の培地成分を最小限にする。

具体的データ

表1 繰り返し接種菌体の生・死による抑止性の誘導の有無

図1 土壌中の菌糸の伸長の比較

図2 繰り返し接種土壌中のRhizoctonia solaniの出現率の変化

図3 抑止土壌の熱処理による抑止性の消失と微生物性の変動

その他

  • 研究課題名:連・輪作に伴う生物間相互作用を活用した生育障害防止技術の開発
  • 予算区分 :総合的開発(高収益畑作)
  • 研究期間 :平成6年度(平成4~6年)
  • 発表論文等:テンサイ根腐病激発土壌およびRhizoctonia solaniを繰り返し接種
                       した土壌の抑止性について、日植病報、59(6)、773、(1993)