レンゲ毛状根を利用したダイズシストセンチュウ無菌培養法

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要約

レンゲ毛状根を利用して、ダイズシストセンチュウ(SCN)を無菌培養する方法を開発した。RM培地に生育させたレンゲ毛状根に、表面殺菌したSCN2期幼虫を約150頭接種する。約3週間後、充実した卵嚢を形成している雌成虫を新しい毛状根培地に移植し、継代を行う。

  • 担当:北海道農業試験場・生産環境部・線虫研究室
  • 連絡先:011-857-9247
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物虫害
  • 対象:豆類
  • 分類:研究

背景・ねらい

in vitro系において植物寄生性線虫の基礎実験系を構築していくには、無菌線虫の利用が必要不可欠となっている。しかしながら、シストセンチュウにおいては、以前から二者培養法について種々検討されてきてはいるが、培養技術として具体的な情報を提供できるまでに至っていない。そこで、より簡便で効率化を目指すために培養基として毛状根を選び、無菌シストセンチュウを安定的に供給する方法を開発する。

成果の内容・特徴

<培養の方法>
Agrobacterium rhizogenes(MAFF 02-10265)を感染させ、形質転換して得たレンゲ毛状根を等濃度のRoot-culture-medium(RM培地)で継代・培養する。このレンゲ毛状根培地にメトキシエチル塩化水銀420ppm.20min.で表面殺菌したSCN2期幼虫約150頭/9cmシャーレを接種する。約3週間後に充実 した卵嚢を産生している雌成虫1頭または2頭を新しいレンゲ毛状根培地に移植していくことによって、継代を行う(第1表,第1図)。
<本法の特徴>

  • レンゲ毛状根によるSCN培養には、寄生率、生育所要日数等において大豆毛状根よりも優れている(第2表)。
  • レンゲ毛状根は、光を良く透過し、根内組織内に侵入寄生したSCN幼虫の観察が容易である(第2図)。

成果の活用面・留意点

  • 本法により増殖したSCNの感受性大豆品種に対する寄生性に変化はない。
  • 本法は、単にSCNの増殖に限らず、ステージ別発育速度の調査等多くの生態研究にも利用できる。

具体的データ

表1 レンゲ毛状根における接種頭数の別による雌1頭あたりの産卵数

図1 各濃度段階のRM培地に生育させたレンゲ毛状根における接種頭数の別によるSCN成虫寄生率

表2 レンゲ、ダイズ毛状根におけるSCN寄生数と1世代所要日数

図2 レンゲ毛状根におけるSCN発育状況

その他

  • 研究課題名:無菌条件下におけるシストセンチュウ培養法の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(平成4~6年)
  • 発表論文等:レンゲ毛状根によるダイズシストセンチュウの培養,
                      応動昆北海道支部会講要,1995.