流域の草地開発の進んだ釧路湿原周辺河川における汚濁物質の流出特性

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

釧路湿原周辺河川の水質の特徴は、渇水時には窒素と懸濁物質の濃度は低く、降雨流出時には比流量が増すにつれていずれも高くなるが、懸濁物質の増加割合は窒素よりはるかに大きい。

  • 担当:北海道農業試験場・草地部・草地地力研究室
  • 連絡先:011-857-9237
  • 部会名:生産環境、畜産・草地
  • 専門:環境保全
  • 対象:
  • 分類:研究

背景・ねらい

最近の釧路湿原の植生調査によると、湿原に流入する河川の流入口より下流で植生の変化が認められ、その原因として河川を通じて流入する土砂、窒素、リン等の汚濁物質の影響が推定されている。そこで、河川を通じ流入する汚濁物質の特性を知るため、周辺河川のうち流域の草地開発が最も進んでいる久著呂川をモデルとし、その中流(上中流の流域面積98km2)の光橋で2年1ヵ月間にわたり、原則一週間に一回、降雨流出時は更に頻度を多くし、採水した。河川水の水質はイオンクロマトグラフ等で分析した。

成果の内容・特徴

  • 河川水の硝酸態窒素濃度は全窒素濃度の4割以下を占める。渇水時、平水時及び降雨流出時を各々比流量0~0.05、0.05~0.10及び0.10~m3/秒・km2流域面積とすると、全窒素濃度は渇水時及び平水時には低く保たれ、降雨流出時には増加する(表1)。全体として全窒素濃度は流量が増えるに従い増加する。(r=0.70、n=274、1%レベルで有意)。渇水時及び降雨流出時は調査時の各々61及び7%を占めるが、調査時の流下全窒素量の14%が渇水時に、47%が降雨流出時に流下する(表1)。全リンも、全窒素とほぼ同様の傾向を示す。
  • 汚濁物質濃度は渇水時には低い値を示すが、流量が増すにつれ、急速に増加するr=0.77、n=274、1%レベルで有意)。汚濁物質の73%は降雨流出時に流下する(表1)。
  • 平水時の階層の日平均流下量を1としたときの他の階層の流下量の相対値を全窒素と懸濁物質で比較すると、比流量が増えるに従い両者とも増加するが、懸濁物質の増加割合は全窒素よりもはるかに大きい(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 平水時の硝酸態窒素濃度は農業用水の水質基準以下であるが、環境に及ぼす影響については未検討である。
  • 釧路湿原保全のための周辺の農用地及び河川管理を検討する際の参考になる。
  • 釧路湿原周辺と類似した環境の河川に適用可能と考えられる。

具体的データ

表1 比流量階層別の全窒素、全リン、懸濁物質の平均濃度および合計流下量

図1 比流量階層別の全窒素と懸濁物質の流下量の相対値の比較

その他

  • 研究課題名:湿原周辺部からの発生・流達負荷防止技術の開発(平成3~4年)、
  • 緩衝帯としての湿地の浄化機能の解明(平成5~7年)
  • 予算区分 :公害防止(湿原生態系)
  • 研究期間 :平成6年度(平成4~6年)
  • 発表論文等:久著呂川河川水中の窒素及びリンの量の季節変動、日本土壌肥料学会
                      講演要旨集39号、1993。