地理情報システムを用いた大豆の土地生産力評価

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要約

本評価手法は、地理情報システムを用い、自然立地条件から推定した収量より計算される収量性と収量安定性の2つを評価基準として大豆の土地生産力を評価できる。またその評価図を出力できる。

  • 担当:北海道農業試験場・生産環境部・土壌特性研究室
  • 連絡先:011-857-9241
  • 部会名:生産環境
  • 専門:土壌
  • 対象:
  • 分類:研究

背景・ねらい

生産性向上、土地資源の有効利用のためには、気象、土壌、地形など自然立地条件に基づいた作物の土地生産力を評価することは重要である。しかし、精度の良いデータや高度な演算処理能力を必要とするため、これまで、このような評価はあまり行われていなかった。近年、観測データの整備や情報処理機器の発達によって自然条件と土地生産力の関係を解析することが可能になってきた。そこで、自然条件や収量のデータが揃っている十勝地域の大豆を対象に地理 情報システムを用いた土地生産力評価手法を開発した。

成果の内容・特徴

  • 大豆の土地生産力評価手法
    土地生産力評価用の地理情報システム及び、自然立地条件から推定した大豆の収量より計算される収量性と収量安定性の2つを評価基準とした土地生産力評価手法を開発した(図1)。
    (1) 本地理情報システムは、データ管理、統計解析、及びメッシュオーバーレイの3つのサブシステムより構成され、パーソナルコンピュータで作動する。
    (2) 対象とする年次の大豆の収量データ、および自然立地条件として収量調査地点の土壌データ、対象年次の気象データ、地形データを入力する。同時に土壌図、積算気温、積算降水量、積算日照時間、標高のデータをメッシュデータとして準備する。
    (3) 入力・蓄積した自然立地条件を要因項目に、大豆の収量を外的基準に、数量化II類による統計を行い、収量推定式を作成する。更に、推定式の精度向上のための相関性の低い要因項目を除外する。
    (4) 対象とする各年次ごとに上記作業を行い、得られた推定式より各メッシュでの大豆の収量を計算する。得られた推定収量より対象期間内の収量性と収量安定性を計算し、この2つの総合特性によって土地生産力を評価する(表1)。
  • 評価手法の検証
    大豆の収量データとして昭和59年から昭和61年の十勝農作物増収記録会のデータ(120地点)を、また、自然条件データとして地力保全基本調査、国土数値情報の標高データ、AMeDASデータを用いて十勝支庁管内池田町と鹿追町において本評価法の検証を行った。推定式の寄与率は0.6~0.8の範囲であり、収量性やその年次変動をよく再現していた。同時に土地生産力評価図を250mメッシュで作成した(表2、図2)。

成果の活用面・留意点

本研究の評価手法は他地域、他作物にも適用できる。ただし、精度の高い収量推定式を得るには、データの質・量の確保、地域や作物に応じた要因項目を抽出が必要である。また、本手法は病害虫似対する立地条件を考慮していない。

具体的データ

図1 地理情報システムの概要と生産力評価の手順

表1 評価基準の算出法

表3 土地生産力評価基準

図2 大豆の土地生産力評価図

その他

  • 研究課題名:北海道における土地生産力評価システムの開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(昭和63年~平成6年)
  • 発表論文等:地理情報システムを用いた大豆の生産力評価図の作成,
                      日本土壌肥料学会 講演要旨集、41、137、(1995)