十勝地方における小麦の品質・成分の安定する時期

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要約

小麦は穂首黄化時期かそれ以前に生理的成熟期に達する。その時点の子実水分は40%以上であるが、ほとんどの成分・品質は既に安定していることから、早期収穫法の確立後は、穂首の黄化を小麦の早刈りの指標とすることができる。

  • 担当:北海道農業試験場 畑研セ 生産チーム
  • 連絡先:0155-62-2721
  • 部会名:作物生産
  • 専門:栽培
  • 対象:麦類
  • 分類:普及

背景・ねらい

小麦生産においては登熟期の降雨などによる品質の低下が問題となっている。一方、小麦の機械収穫は子実水分が30%以下に低下してから行われているが、この時期を早めることができれば、立毛中の遭雨による品質低下を避けることができる。小麦の品質劣化を回避する方法の一つとして早期収穫法を想定し、そのための早刈り限界を明らかにするために、千粒重・子実水分と品質・成分の経時変化を検討した。

成果の内容・特徴

  • 秋播小麦では生理的成熟期(千粒重が有意に増加しなくなる時期)は穂首の黄化する時期とほぼ一致し、春播小麦では生理的成熟期以後に穂首が黄化した。冷害年であった1993年では生理的成熟期・穂首の黄化する時期とも遅れる傾向があったが、生理的成熟期以前に穂首が黄化することはなかった(表1)。
  • 生理的成熟期における子実水分は品種・年度により異なったが、常に40%以上であった(図1)。
  • 1992年のアミログラム最高粘度が300B.U.以下に低下したのは生理的成熟期以後であったが、1993年のチホクコムギ・ハルユタカではそれ以前に低下した(図2)。
  • 原粒蛋白、原粒灰分は登熟にともない減少し、3年間とも生理的成熟期以前に一定の値に達していた。また、粒度・沈降価も生理的成熟期以後に大きく変化することはなかった。小麦粉ペーストの反射率(色)の推移は年度により異なったが、生理的成熟期付近ではほぼ安定した値を示した(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 収穫・乾燥過程における品質変動についても検討する必要がある。
  • 生理的成熟期以前に低アミロ化することもあり、生理的成熟期の収穫でも品質低下を回避できない場合がある。

具体的データ

表1 生理的成熟期とその指標

図1 登熟に伴う千粒重、子実水分の推移

図2 登熟に伴うアミログラム最高粘度の推移

図3 登熟に伴う小麦粉の色の推移

その他

  • 研究課題名:品質・成分からみた硬軟質小麦の早刈り限界の確定
  • 予算区分 :高品質輪作
  • 研究期間 :平成6年度(平成3年~5年)
  • 発表論文等:登熟に伴うコムギ品質の推移、日作紀,62(別1:294-295)、1993.