泌乳牛における飼料エネルギーの乳生産への利用効率

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

泌乳牛のエネルギー出納試験を行い、乳エネルギーの推定式を作成した。摂取エネルギーの平均は371MJであり、代謝エネルギーの乳エネルギーへの利用効率(kl)は64.0%であった。乳脂率4%の牛乳1kg生産に要する代謝エネルギーは4.573MJと推定された。

  • 担当:北海道農業試験場・畜産部・栄養生理研究室
  • 連絡先:011-857-9269
  • 部会名:畜産・草地(畜産)
  • 専門:動物栄養
  • 対象:家畜類
  • 分類:指導

背景・ねらい

わが国の乳牛のエネルギー代謝試験は、1961~62年に日本飼養標準設定のために実施されて以来、この間の高泌乳化に対応した飼料エネルギーの分配区分やエネルギー要求量に関する知見は少ない。そこで、わが国のホルスタイン種乳牛の現在の産乳能力、環境条件、飼料条件、飼養管理条件下での飼料エネルギーの分配区分、代謝エネルギー(ME)の乳生産への利用効率(kl)を明らかにした。

成果の内容・特徴

日乳量15~53kgの3、4産の泌乳牛19頭を用い、53例のエネルギー出納試験を行った。給与飼料は、日乳量28kg以上の泌乳牛では乾物粗飼料率39~41%(28kg未満の牛では50~70%)、実測TDN66~77%(同63~73%)、CP13~19%(同11~15%)、OCW31~44%(同33~54%)の範囲にあるTMR12種類を用いた。

  • 泌乳牛のエネルギー区分は、摂取エネルギーが371MJ/日であり、摂取エネルギーに対するエネルギー利用・損失区分の割合は表1のとおりである。GE(総エネルギー)、DE(可消化エネルギー)、ME各摂取量の乳エネルギー(LE)への利用効率はそれぞれ25%、39%、45%となり、'61~62年のエネルギー代謝試験成績で示された利用効率にくらべ、50%前後(47~56%)改善されている。
  • 表1のI式から、LEのデータを体蓄積・損失エネルギー=0に補正した結果、そのLE0(kJ/kg0.75)とME(kJ/kg0.75)との間には直線的関係が認められ(図1)、泌乳期をとおして給与される実用的な飼料構成の範囲内では、MEの乳生産への利用効率(kl)は定数として扱える。そのkl値は64.0%であり(表2)、日本飼養標準(乳牛、1994年版)のkl値62.0%と近似している。
  • 表2のII式より、乳脂率4%の牛乳1kgのエネルギー推定値は2.927MJ(=700kcal)であり、その生産に要するMEは4.573MJ(=1093kcal)と推定される。

成果の活用面・留意点

  • 本成績の適用は、日乳量50kgまで、乾物粗飼料率40~70%、気温は3~20Cを範囲とする。
  • 用いたデータは、基本的には乳量の安定した泌乳前、中後期のものであるため、成果の適用範囲もその期間に限定される。
  • 利用効率(kl=64.0%)は、95%信頼区間が60~68%の範囲にあるので、飼養標準で示されている62.0%と等しいと考えられる。

具体的データ

表1.泌乳牛における摂取エネルギーの利用・損失区分

 

図1.ME摂取量と乳エネルギーとの関係

 

表2.乳エネルギーの回帰式

 

その他

  • 研究課題名:高泌乳時における乳牛の養分要求量に関する研究
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成3年~6年度
  • 発表論文等:
    1)ホルスタイン種泌乳牛のエネルギー代謝、日畜会報、66(4)、1995
    2)完全混合飼料給与におけるホルスタイン種泌乳牛の乾物摂取量と養分要求量に関する研究、北農試研究報告、165、1996