北海道東部酪農地帯のらい小麦のわら生産性

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要約

らい小麦のもつ耐寒性や耐肥性などの特性を利用し,小麦作に不適な根釧地区を含む北海道東部地域に導入すれば,700kg/10a以上のわらを収穫でき,酪農地帯のわら不足解消に役立つ可能性がある。

  • 担当:北海道農業試験場・企画連絡室・総合研究第3チーム、北海道農業試験場・生産環境部・養分動態研究室
  • 連絡先:0155-62-2721
  • 部会名:地域総合研究畜産・草地(草地)
  • 専門:栽培
  • 対象:麦類
  • 分類:研究

背景・ねらい

酪農を専業とする根釧地区や畑作も行われている斜網地区を含む北海道東部地域のなかには,小麦の栽培に適さない地域がある。こうした地域では乳牛飼養規模の拡大や肉用牛の導入が進むなかで,粗飼料や敷料,たい肥用のわらの確保とスラリーを中心としたふん尿の耕地還元量の増大を目的とした,麦類の導入は緊要の課題となっている。そこで小麦に比較して耐寒性,耐倒伏性,耐肥性,耐病性が強く,乾物生産力が高いらい小麦の現地導入試験を実施し,わら生産の可能性を検討した。

成果の内容・特徴

  • らい小麦の導入栽培は品種PRESTOを用い,9月中旬に播種,播種量は8kg/10a,基肥は窒素4kg/10a(麦用化成),追肥は起生期に窒素6kg/10a(硫安)を施用する。牧草地の更新として導入する場合,初年度は起生期の追肥は行わず,2年目以降は基肥の他に起生期に窒素2~4kg/10aを追肥する。収穫時期は8月上旬となる。
  • 道東地域の斜網地区や小麦が栽培できない根釧地区で,700kg/10a(乾物)以上のわらの生産量が期待できる(表1)。なお,子実の利用法は検討中である。3.スラリーで化学肥料相当量のアンモニア態窒素を施用することで,らい小麦の収量は化成肥料と同等以上となり栽培が可能である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 根釧地区のような牧草地では作業・機械体系などが畑作と異なるため,それらを十分に検討して,らい小麦の導入を行う必要がある。
  • 現在栽培しているらい小麦の種子は,全量輸入している。
  • らい小麦はうどんこ病やさび病に対する抵抗性が強く,発生はみられないが,雪腐病や赤かび病への抵抗性は小麦並みで,注意が必要である。
  • 作付地帯の限界については不明な点が残っているため,予め検討が必要である。

具体的データ

表1.現地栽培の収量

 

表2.スラリーによるらい小麦の栽培

その他

  • 研究課題名:地域資源の高度利用システムの開発
  • 予算区分:地域総合・経常
  • 研究期間:平成7年度(平成5年~9年度)
  • 発表論文等:北海道東部地域へのらい小麦導入によるわら自給の可能性、日本土壌肥料学会大会講演要旨、1996