減農薬のための株間への除草剤散布制御システム

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要約

株間除草を目的として株間にだけ除草剤を散布する散布制御システムを開発した。このシステムは、透過形フォトセンサで作物を感知し、速度ならびに作物に対する散布ノズル位置を把握することにより散布動作を制御する。

  • 担当:北海道農業試験場・畑作研究センター・生産技術研究チーム
  • 連絡先:0155-62-2721
  • 部会名:農村計画(農業物理)
  • 専門:作業
  • 対象:農業機械
  • 分類:研究

背景・ねらい

北海道の大規模畑作地帯においては、株間除草作業の省力化が要請されている。なかでも、農薬使用量を低減する観点から種々の機械除草機が開発されてきたが、個々の作物体に対応した高精度の防除を行うには至っていない。そこで、条間は機械除草し、株間を除草剤散布する除草技術を開発するため、ここでは、薬剤の株間散布制御技術の開発を行う。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、株間をセンシングして株間にのみ除草剤を散布することが可能な除草剤散布制御システムである(図1)。
  • 正確な散布制御に必要な速度の情報は、作物個体が2組の透過形フォトセンサ間を通過する時間を測定して求め(図2)、散布ノズルと作物の位置情報は、透過形フォトセンサおよび後部転動輪の回転数を計測して求める。
  • マイコンは作物およびノズル位置、機体速度から散布開始時、散布中止時の動作遅れ時間に相当する走行距離を計算し、電磁バルブの開閉により薬液散布を制御する(図3)。
  • 散布中止命令から散布中止までの動作遅れ時間は平均で0.16sであり、同様に散布開始時の動作遅れ時間は0.10sである。したがって、走行速度が変化すると散布位置がずれるため、機体速度と散布ノズルに対する作物の位置情報から散布機構の持つ動作遅れ時間を見込んで散布制御命令を出し、速度による散布位置のずれを修正する(図4)。
  • この散布制御アルゴリズムでは、作業速度の限界値は株間の間隔と株前後の散布中断区間によって決まり、散布区間と散布中断区間が広いほど速い作業が可能となる(図5)。
  • 試作した散布制御システムでは、株間20cm、散布中断が前後4.7cmのとき、針金状の疑似作物に対し最高は2.0km/hまでの速度で動作が確認できた。

成果の活用面・留意点

  • 本システムは、除草剤の株間散布や他のスポット的な薬剤散布の制御方法として応用できる。また、動作遅れ時間を考慮した制御は、機械除草へも応用できる。
  • 速度測定を正確に行うためには、作物センサの高さは、風で位置が動きにくい茎などの部位を感知するよう設定する必要がある。
  • 試作した散布制御システムでの作物検出は、地表から一定の高さに設置した透過形フォトセンサで感知するものを作物と見なし、それより低いものを雑草と判断させている。実際の多様な作物へ適用するには各々の作物に応じたセンシング方法を用いる必要がある。

具体的データ

図1. 図2.

 

図3.制御図の概略図

 

図4.散布制御動作の概略図

 

図5.機体速度と散布限界速度の関係

 

その他

  • 研究課題名:スポット防除メカニスムと制御技術の開発
  • 予算区分:軽労化農業
  • 研究期間:平成7年度(平成4年~8年度)