渦相関法による顕熱・潜熱・二酸化炭素フラックスの可搬型計測システム

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要約

超音波風速計と赤外線吸収型水蒸気・二酸化炭素変動量計を用いて、渦相関法により顕熱・潜熱・二酸化炭素のフラックスを直接測定できる可搬型計測システムを開発した。

  • 担当:北海道農業試験場・農村計画部・気象資源評価研究室
  • 連絡先:011-857-9234
  • 部会名:農村計画(農業物理)
  • 専門:農業気象
  • 分類:研究

背景・ねらい

地表面付近のエネルギーや物質循環の動態を明らかにすることは、低温など大気環境の作物生産への影響や融雪過程のメカニズムを考察する上で有効であるばかりでなく、地球規模での気候変動が農業生産に及ぼす影響を評価するためにも重要である。そこで、地表面付近の物質やエネルギーの輸送量(フラックス)の計測において、寒冷積雪面上や熱帯域など多様な気象条件の下でも計測装置の設置作業が容易で、高い測定精度が期待できる、渦相関法による可搬型のフラックス計測システムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、超音波風速計と赤外線吸収型の水蒸気・二酸化炭素変動量計による乱流変動の計測データをパーソナルコンピュータに入力して乱流変動成分を抽出し、渦相関法により顕熱・潜熱・二酸化炭素フラックスを算出する、可搬型の計測システムである(図1)。
  • 測定部が小型で、データ収録にラップトップ型のコンピュータを使用しているので、可搬性が高いシステムである。計測器は1名でも40分程度で容易に設置可能である。
  • 本システムを用いて行った熱帯赤道域と冬季積雪面上の観測では、良好なデータが得られている。熱帯の草地上の事例では、顕熱・潜熱のフラックスが全天日射量の変動に素早く対応するなどの結果が得られている(図2)。また、札幌における融雪期の10日以上の長期連続観測では、消雪の前後で顕熱・潜熱フラックスの日変化パターンが全く異なるなどの新しい知見が得られている(図3)。

成果の活用面・留意点

降雨時には水蒸気などの測定ができないため、降水の少ない時期の測定に適している。測定時には商用電源または発電機による、交流電源の安定供給が必要となる。

具体的データ

図1.渦相関法によるフラックスシステム

 

図2.赤道熱帯域の草地上での全天日射量と顕熱・潜熱フラックス

 

図3.北農試試験圃場における融雪期から清雪後の顕熱・潜熱・二酸化炭素フラックス

 

その他

  • 研究課題名:渦相関法による接地境界層内の各種フラックスの測定
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成4年~7年度)
  • 発表論文等:
    Solar radiation and energy flux change on Manus Island,Papua New Guinea, Jour. Meteor. Sco. Japan. 73, 1995
    消雪前後での乱流フラックスの変化、日本気象学会1995年春季大会講演集67、1995