稲作地帯における農地流動システムの再編条件

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要約

北海道稲作地帯では固有の農地流動システムが存在する。しかし、近年はそれが有効に機能しなくなっている。このシステムの再編条件は、農家の合意形成のた めに必要な新しい理念の形成、増加する農地賃貸借の積極的な位置づけ、農地集団化手法の組込み、土地改良投資負担方式の再検討である。

  • 担当:北海道農業試験場・農村計画部・農業組織研究室
  • 連絡先:011-857-9309
  • 部会名:農村計画(農業経営)
  • 専門:経営
  • 分類:行政

背景・ねらい

北海道の農地移動は、売買に代わって賃貸借が大きく伸び、農地を取得するのは経営規模の大きな農家に限られるようになり、農地取引が広域化するなどの特徴がみられる。ところで、北海道における農地移動は固有の理念、手順、枠組みのもとで行われており、農地流動システムといえる仕組みを形成してきた。しかし、農地移動実態の変化は、従来からの農地流動システムの継続に重大な支障を及ぼすようになっている。そこで、稲作地帯の実態をもとに農地移動の変化を整理し、農地流動システムが再び十分に機能するための条件を示すことが必要である。

成果の内容・特徴

  • 北海道の農地移動は、負債や転職などによる離農を契機として農地が供給され、その農地が農事組合を介して、集落内の小規模農家や隣接農地保有者に優先的に、しかも売買形態で取得されてきた。この枠組みは多くの稲作地帯で農地流動システムとしてほぼ確立していた。
  • 代表的稲作地帯の一つである北空知F市の実態調査から、最近の農地移動の特徴としては、1農地移動件数・面積が増加し、賃貸借割合が高まっていること(図1)、21980年代前半以降農地価格が下落傾向にあり(表1)、農地需給緩和が進み、条件の劣る農地の受け手がみつけにくくなってきたこと、3農地供給要因が農業見切り、転職、負債から後継者不在・高齢化に移行したこと(図2)、4農地を取得する農家の大規模化が進んだこと(図3)、5農地保有合理化法人の関与が増大したこと、と整理できる。
  • この結果、農地流動システムの実効性は以下の理由により著しく低下している。第一に、賃貸借の増加によって、もともと売買を対象としたシステムが有効に機能しなくなった。第二に、農地需要が大規模階層に限定され、集落内で取得者が見いだせず、農地移動の広域化が見られるようになり、農地分散が促進されるようになった。このため、既存の農地流動システムの再編が必要となっている。
  • システム再編のための条件は次のように整理できる。第一は、小規模農家優先による農家数維持を理念とした従来システムに代わる新たな理念形成と目的設定である。これは農家間の合意形成問題にもつながるが、担い手形成という新しい価値基準が必要である。第二に、賃貸借の位置づけを明確にすることである。第三に、農地集団化をシステムにビルトインするための手順と方法の確立である。第四に、農地の選別強化に対応して土地改良投資及び負担方式を再検討することである。

成果の活用面・留意点

農地流動システムの再編は政策・制度形成のあり方とも関連するが、この点の検討は十分行っていない。また、依然として農地売買が主体であり、農地需給がタイトである地域では必ずしも妥当しない。

具体的データ

図1.農地移動件数の推移

 

表1.10アール当たり農地価格の推移

 

図2.離農時の経営主年齢構成の推移

 

図3.集落別経営水田面積の推移

 

その他

  • 研究課題名:農地移動要因の変化が経営規模拡大行動に与える影響の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成5年~7年度)
  • 発表論文等:北海道型農地流動システムの変容と再編課題、農業経営通信、10、1995