ジャガイモそうか病菌に対する野草 Geranium pratense の抗菌活性

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要約

野草のGeranium pratenseはジャガイモそうか病菌(Streptom yces scabies)に対する抗菌性物質 geraniin を根中に大量に含有し、ポットの土壌にこの植物の根を添加するとジャガイモそうか病の発病が低下する。

  • 担当:北海道農業試験場・草地部・草地地力研究室、北海道農業試験場・畑作研究センター・ばれいしょ育種研究室
  • 連絡先:011-857-92370123-36-8861
  • 部会名:生産環境、畜産・草地(草地)
  • 専門:薬剤
  • 対象:野草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

バレイショの重要な土壌病害であるジャガイモそうか病に対する現在の防除技術は、効果が不十分で安定性に欠く。一方、植物の中には特殊な化学物質をその体内に含有するものがあり、土壌に供給することにより、他の植物あるいは土壌微生物に影響を与えることが知られている。そこでジャガイモそうか病菌に対し抗菌性を示す植物を検索し、その植物に含有される抗菌物質の分離同定を試みる。

成果の内容・特徴

  • 多数の牧・野草についてジャガイモそうか病菌に対する抗菌作用を調査した結果、G.pratense(図1)が強い抗菌性を示す。
  • 病土を入れたポットにG.pratenseとバレイショを混植すると、G.pratenseの密度が高いほどジャガイモそうか病の発病は低下する。G.pratenseの根あるいは根の抽出物をポットの土壌に添加すると、ジャガイモそうか病の発病が低下する(図2)。
  • G.pratenseに含有される抗菌物質の主成分はgeraniin(図3)である。この物質は根の乾物重の約15%と多量に含有され、抗菌活性はstreptomycinの約1/80で植物起源としては比較的強い(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 植物由来抗菌物質geraniinから新規殺菌剤開発の可能性がある。

具体的データ

図1.野草 G pratense

 

図2.G.pratenseの根部すき込みによるジャガイモそうか病の発病軽減

 

図3.geraniinの構造 図4.

 

その他

  • 研究課題名:牧野草の根圏機能の活用法の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成6~7年度
  • 発表論文等:
    フロウソウ属植物を利用したジャガイモそうか病の生態的制御の可能性、日本土壌肥料学会講演要旨集弟41集、1995
    Geraniumpratenseに含まれるジャガイモそうか病菌(Streptomycesscabies)に対する抗菌性物質、日本土壌肥料学会講演要旨集弟41集、1995