だいずの遺伝子TおよびIと耐冷性

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要約

準同質遺伝子系統だいずの耐性冷検定により、毛茸色と種皮色を支配する遺伝子Tが耐冷性機能全般に、種皮の色素の分布を支配する遺伝子Iが低温による種皮の褐変と裂皮に関与していることが明らかになった。

  • 担当:北海道農業試験場・地域基盤研究部・越冬ストレス研究室
  • 連絡先:011-857-9382
  • 部会名:基盤研究
  • 専門:バイテク
  • 対象:豆類
  • 分類:研究

背景・ねらい

臍が黄色(遺伝子I)で毛茸が白色(遺伝子t)の白目・白毛品種は外観品質が優れているため需要が高いが、低温による収量と品質の低下が、臍色が褐色(遺伝子ii)で毛茸色が褐色(遺伝子T)の褐目・褐毛品種に比べて甚だしい。このだいずの色と耐冷性との関係は、白目耐冷性品種育成の障害になっている。そこで遺伝子TとIに関する準同質遺伝子系統(北海道立十勝農業試験場が育成した褐毛系統To7Bと白毛系統To7G、およびアメリカ合衆国農務省が育成した白目・白毛品種Harosoyの褐毛系統L66-707と褐目系統L67-38)を供試して耐冷性検定を行い、遺伝子TおよびIと耐冷性との関係 を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 開花期の低温処理(開花始より15°Cで4週間)の結果、白毛系統(To7G;遺伝子t、i-i)は褐毛系統(To7B;遺伝子T、i-i)に比べて、成熟期が遅延し、収量と窒素固定能力が低い(表1)。
  • 開花期の低温処理(開花始の8日後より15°Cで2週間)により、Harosoy(遺伝子I、t)の種皮は褐変するが、褐毛系統(L66-707;遺伝子I、T)の種皮の臍周辺は褐変せず、褐目系統(L67-38;遺伝子i-i、t)の種皮は甚だしく褐変する(図1)。
  • 開花期の低温処理(同上)により、Harosoyの種皮は裂皮するが、褐毛系統(L66-707)の種皮はわずかしか裂皮せず、褐目系統(L67-38)の種皮は甚だしく裂皮する(図2)。
  • 着色と裂皮に関する低温感受性は花の生育ステージが進むにつれて増大し、両者の系統間差異は同じ傾向を示す。種子の着色指数(着色無:0~甚:4)と裂皮指数(裂皮無:0~甚:4)の間には有意な相関が認められる。そのため、両者には同一の生化学的メカニズムが関与していると推定される。
  • 以上の結果より、遺伝子T(フラボノイドー3'ーヒドロキシラーゼをコード)が、耐冷性機能全般(収量、窒素固定能力、種皮の褐変と裂皮)に、遺伝子I(カルコンシンターゼをコード)が低温による種皮の褐変と裂皮に、連鎖または多面発現の作用により関与していることが明らかになった。

成果の活用面・留意点

  • だいずの耐冷性に関連した遺伝子が明らかになった。
  • 白目・褐毛品種は種皮色がくすむが、白目・白毛品種より耐冷性が高く、白目・耐冷性品種育成の手段の一つになることが示された。
  • 褐目・白毛品種は白目・白毛品種に比べて、開花期の低温による種皮の褐変と裂皮の程度が高いことが明らかになった。
  • 遺伝子IとTはフラボノイド合成酵素をコードしており、フラボノイドと耐冷性機能との関連が示唆される。

具体的データ

表1 開花期の低温処理による収量形質の系統間差異

図1 開花期の低温による種皮の着色指数

図2 開花期の低温による種皮の裂皮指数

その他

  • 研究課題名:マメ類の耐冷性の遺伝に関する研究
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成8年度(平成1~5、8年)
  • 研究担当者:高橋良二-->
  • 発表論文等:Association of T gene with chilling tolerance in soybean,Crop Science,36,1996