てんさいの簡易品質測定法とそれを利用した高品質系統の育成
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要約
原料てんさいの品質劣化に関与する有害性非糖分について、低含量への効率的な個体選抜法を開発した。また、有害性非糖分含量の低い高品質な細胞質雄性不稔維持種子親系統を選抜・育成した。
- 担当:北海道農業試験場・畑作研究センター・てん菜育種研究室
- 連絡先:0155-62-9271
- 部会名:作物、高収益畑作
- 専門:育種
- 対象:工芸作物類
- 分類:研究
背景・ねらい
原料てんさいの品質は、根中糖分に加えて、有害性非糖分と総称されるアミノ態窒素、カリウム、ナトリウムの含量によって測定される。有害性非糖分は、製
糖時に糖蜜を形成するため、製糖効率を低下させる大きな原因となっている。そのため、有害性非糖分含量の低い高品質品種の育成が強く要望されている。そこ
で、高品質品種の育成を目的に、高品質育種素材を育成するための品質による個体選抜法と、その選抜効果について検討した。
成果の内容・特徴
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てんさいの有害性非糖分含量を個体単位で測定する方法として、搾汁液の電気伝
導率による測定法並びにオートアナライザーによる測定法を開発した(図1)。
- 搾汁液の電気伝導率による測定法は、簡便であり、また、カリウム及びナトリウム 含量との相関が高いため、特に大量の個体を扱う選抜初期世代において有効である。
- オートアナライザーによる測定法は、搾汁液の有害性非糖分すなわちアミノ態窒素、カリウム、ナトリウムの含量を個体単位で精密に測定することにより、高品質個体を高 精度で選抜することが可能である。
- 有害性非糖分による品質選抜効果は、選抜初期世代で大きく、選抜を経るに従って その効果は低下することから、繰り返して選抜する必要性は少ないと考えられた(図2、図3、図4)。
- 本手法で低有害性非糖分含量系統の選抜を行い、高品質品種「モノヒカリ」並か、 それ以上の高品質性を備えた細胞質雄性不稔維持種子親系統を選抜・育
成した。この系 統は、一代雑種種子親系統の段階でも、高品質性を示した。今後、一代雑種品種におけ る種子親系統としての利用が期待できる(図5)。
成果の活用面・留意点
- 育成された高品質てんさい雄性不稔維持種子親系統を用いて、高品質てんさい一代 雑種の育成が可能となる。
- 有害性非糖分による低含量系統の選抜回数は、2回程度で十分である。
- 高品質性と同時に、多収性、耐病性等の特性の優れる系統の育成が重要である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:てんさい優良品種の育成、高糖・難劣化性てんさい品種の育成
- 予算区分:経常、大型別枠(高収益畑作)
- 研究期間:平成8年度(昭和36~平成9年度)
- 研究担当者:蔵之内利和・田中征勝-->
- 発表論文等:テンサイ個体レベルでの有害性非糖分含量と根茎重・ブリックス度との関 係、てん菜研究会報、
33、1992
テンサイ高品質系統の開発、育種学雑誌、43(別2)、1993
Breeding of high quality sugar beet variety,日・ロアグリワークショップ講演要旨集、1994.
Breedings of sugar beet F1 hybrid lines for high processing quality., Jour.of Sugar Beet Res.(32).2&3.1995