たまねぎ雄性不稔細胞質の特異的DNA増幅による細胞質型の迅速識別法
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要約
たまねぎの細胞質雄性不稔系統を新たに育成するためには、細胞質型の識別が不可欠である。雄性不稔細胞質に特異的なDNA塩基配列を明らかにすることにより、従来の検定交配に比べて画期的に効率の良い細胞質型識別法を開発した。
- 担当:北海道農業試験場・作物開発部・上席研究官,野菜花き研究室
- 連絡先:011-857-9306
- 部会名:作物
- 専門:育種
- 対象:葉茎菜類
- 分類:研究
背景・ねらい
細胞質雄性不稔系統を新たに育成するためには、細胞質型の識別が不可欠である。たまねぎでは検定交配による細胞質型の識別に4~8年を要しており、迅速
な細胞質型識別法の開発が望まれている。近年開発されたPCR法を利用すれば飛躍的に効率の良い識別が可能となるが、そのためには雄性不稔細胞質に特異的
なミトコンドリアDNA塩基配列情報が必要である。本研究では、雄性不稔細胞質に特異的な塩基配列を明らかにすることにより画期的に効率の良い細胞質型識
別法を開発しようとした。
成果の内容・特徴
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たまねぎの正常細胞質(N型)と雄性不稔細胞質(S型)とを識別できるPCR分析法を確立するために、N型とS型との間で発現パターンの異なるミトコンドリア遺伝子cobの単離とクローニングを行い、制限酵素サイトを決定した。
- クローニングしたDNA断片の塩基配列を決定したところ、cob遺伝子そのものの塩基配列には細胞質型による違いが認められなかったが、翻訳開始点より
56bp上流の領域は相同性を失っていた。しかもS型ミトコンドリアのこの領域は葉緑体ゲノムの一部と極めて高い相同性がある。
- 各細胞質型に特異的なDNA領域を選択的に増幅できるプライマーを合成し
(図1)
、PCRによる増幅DNAの電気泳動を行ったところ、それぞれの細胞質型に特異的なサイズのDNAが検出された。
- 微量(50mg程度)のたまねぎ葉身から簡易にミトコンドリアDNAを抽出する方法及び上記プライマーを用いて1日で細胞質型を識別できる方法を確立した。
- この方法により、北海道在来品種「札幌黄」の15系統各20個体について個体別に細胞質型を識別し、雄性不稔系統及び維持系統の育成素材を選抜することができた
(表1)
。
成果の活用面・留意点
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近年発見されたT型細胞質を識別することはできない。
- 開発したプライマーについては特許出願中である。
・平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:たまねぎ雄性不稔細胞質の特異的DNA増幅による細胞質型の迅速識別法 -(研究参考)
具体的データ


その他
- 研究課題名:たまねぎ雄性不稔細胞質特異的DNA増幅による細胞質型迅速識別法の開発
- 予算区分:科振調(重点基礎)
- 研究期間:平成8年度(平成7年)
- 発表論文等:PCR amplication of the mitochondrial DNA sequence specific to the male-sterile and normal cytoplasm in onion,92nd Annual Meeting of the American Society for horticultural Science,1995
PCR amplication of CMS-specific mitochondrial DNA of onion Proceedings of the 1995 National Onion Research Conference.40-44,1995