ばれいしょ澱粉添加による乳牛の糞尿窒素排泄量の低減化
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要約
乳牛の飼料への易発酵性炭水化物であるばれいしょ澱粉の添加は、飼料の消化性や乳量・乳質に大きな影響を与えることなく、糞尿窒素排泄量を低減させる効果がある。
- 担当:北海道農業試験場・畜産部・生理・繁殖研究室、上席研究官
- 連絡先:011-857-9269
- 部会名:畜産・草地(畜産)
- 専門:動物栄養
- 対象:家畜類
- 分類:研究
背景・ねらい
現在、家畜排泄物による環境負荷をいかに軽減させるかという問題が緊急の解決を迫られている。富栄養化物質の窒素も環境負荷物質として法的な規制対象と
なっており、わが国の家畜糞尿窒素排泄量の約四分の一を占める乳牛の排泄窒素量を低減させることは極めて重要な問題であるが、同時に乳生産も維持させるこ
とが必要である。そこで、乳牛の栄養管理に基づく排泄窒素量低減化技術として、易発酵性炭水化物であるばれいしょ澱粉の飼料への添加が有用か否かを検討し
た。
成果の内容・特徴
飼料条件として
表1
に示した構成の基礎飼料のみ(0%区)、基礎飼料+10%ばれいしょ澱粉(10%区)、基礎飼料+20%ばれいしょ澱粉(20%区)の3区を設定し、3頭の泌乳後期の乳牛を用いて窒素出納試験を実施した。基礎飼料の成分組成は
表2
に示した。20%区のみ1割程度の残食があり、その結果各区のTDNとCPの充足率は
表3
に示した値となった。
-
澱粉添加により、NFEおよび有機物消化率は上昇し、NDF消化率は低下したが、 いずれの消化率の変化も比較的小さいものであった
(表4)
。
- 乳量および乳成分率には有意な変化は認められなかった
(表4)
。
- 糞量には澱粉添加による影響は認められなかったが、尿量は澱粉添加量に比例して減 少する傾向を示した
(表5)
。
- 尿中への窒素排泄量および窒素排泄率(窒素排泄量/窒素摂取量)が、澱粉添加によ り有意に低下し、そのため糞尿中への窒素総排泄量および窒素総排泄率も低下する傾向 を示した
(表5)
。
活用面と留意点
- 易発酵性炭水化物であるばれいしょ澱粉の飼料への添加が、乳牛の栄養管理に基づく排泄窒素量低減化技術のひとつとして利用できる可能性がある。
- 本成績は泌乳後期の乳牛のものであることを留意する必要がある。
具体的データ





その他
- 研究課題名:
乳用牛の糞尿中窒素排泄量に及ぼす要因の解明と制御技術の確立
- 予算区分:総合的開発研究(家畜排泄物)
- 研究期間:平成8年度(平成6~8年)