採草地におけるシバムギの消長に及ぼす草種、施肥量及び刈り取り頻度の影響

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要約

チモシー採草地に侵入したシバムギは、施肥量及び刈り取り頻度の組み合わせでは防除が難しく、経年的に増加する。これに対して、オーチャードグラス採草地では、通常の刈り取り利用法で抑制できる。

  • 担当:北海道農業試験場・草地部・草地管理・地力研究室
  • 連絡先:011-857-9235
  • 部会名:畜産・草地(草地)
  • 専門:雑草
  • 対象:牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

帰化雑草のシバムギは、北海道の採草地で侵入・増加が著しく、草地荒廃の原因となっている。そこで、シバムギを耕種的に防除する技術を開発するために、シバムギの生育特性について検討する。

成果の内容・特徴

チモシー(ホクシュウ)及びオーチャードグラス(オカミドリ)採草地内にシバムギを1m2当たり4株移植し、施肥と刈り取り頻度がシバムギの消長に及ぼす影響について検討した。併せて北農試場内において、シバムギの侵入・増加の実態を、チモシー及びオーチャードグラス採草地において比較調査した。

  • チモシー草地内に移植したシバムギの乾物重構成割合は、施肥量を変えた処理では、3年目にどの処理区も増加し、特に施肥量の多い区で増加が著しかった(図1)。また、刈り取り回数を変えた処理でも、3年目にはシバムギの乾物重構成割合の増加が著しかった(図2)。年5回刈りの処理では増加速度が相対的に小さかったが、同処理区ではチモシーも同時に衰退した。
  • オーチャードグラス草地内に移植したシバムギの乾物重構成割合は、施肥量、刈り取り処理のすべての区で経年的に低下した。また、年次に関わらず2%以下で推移し、チモシー草地に比べて極めて低かった(図3及び図4)。
  • 北農試場内の相互に隣接する利用3年目のチモシー採草地とオーチャードグラス採草地(同じ造成法で同時に造成した)を対象として、シバムギの出現頻度と出現枠内における平均被度を比較した。その結果、チモシー採草地に比べてオーチャードグラス採草地では、シバムギの侵入及び被度が著しく小さかった(表1)。
  • 以上の結果から、チモシー採草地では、侵入したシバムギは耕種的に防除できる可能性は小さい。一方、オーチャードグラス採草地に侵入したシバムギは、通常の刈り取り利用法で抑制が可能である。

成果の活用面・留意点

  • シバムギの増加により荒廃した採草地の更新時に、オーチャードグラスを播種することにより、残存するシバムギを防除することが期待できる。
  • 本成果はチモシーはホクシュウ、オーチャードグラスはオカミドリを用いたもので、道央・道南及び道北地域において適用できる。

具体的データ

図1 チモシー草地における施肥量の違いとシバムギ構成割合の推移

図2 チモシー草地における刈取り回数の違いとシバムギ構成割合の推移

図3 オーチャードグラス草地における施肥量の違いとシバムギ構成割合の推移

図4 オーチャード草地における刈取り回数の違いとシバムギ構成割合の推移

表1 隣接するチモシー及びオーチャードグラス採草地におけるシバムギの出現状況

その他

  • 研究課題名:草地強害帰化雑草の生存戦略の解明と制御技術の開発
  • 予算区分:特別研究(強害帰化)
  • 研究期間:平成8年度(平成5~8年度)
  • 発表論文等:牧草地内侵入したシバムギの耕種的防除法に関する研究第1報オーチャードグラス草地内に移植したシバムギの消長に及ぼす刈り取り頻度と施肥の影響、日草誌、42(別2)、1996
    牧草地内侵入したシバムギの耕種的防除法に関する研究