拮抗細菌をコーティングしたペレット種子によるテンサイ苗立枯病の抑制効果
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要約
拮抗細菌の種子コーティングは、PythiumとRhizoctonia菌いずれのテンサイ苗立枯病も慣行農薬並に抑制できる。この拮抗細菌はXanthomonas属で、播種後には根圏に定着する。菌数は既存のペレット種子の造粒工程で減少するが、造粒後は2カ月間ほとんど減少しない。
- 担当:北海道農業試験場・畑作研究センター・環境制御研究チーム
- 連絡先:0155-62-9276
- 部会名:生産環境
- 専門:作物病害
- 対象:工芸作物類
- 分類:研究
背景・ねらい
テンサイ苗立枯病は、紙筒育苗においては殺菌剤の施用によって大発生をすることはないが、直播栽培の割合が高くなると問題となることが予想される。てんさ
い根圏に生息する細菌から、苗立枯病を抑制する菌株を探索し、その発病抑制効果を明らかにするとともに、製剤化して有効利用法を図る。
成果の内容・特徴
-
てんさい細根に生息する根圏細菌から苗立枯病を抑制する菌株を得た。この菌株は細菌学的な諸性質によりXanthomonasに属する。
- この菌株をコーティングしたペレット種子を用いた紙筒栽培試験では、PythiumまたはRhizoctonia菌いずれの汚染土壌においても苗立枯病を抑制する
(表1)
。ペレット種子を播種したときの根圏菌数は乾根1g当たり106~107cfuである。
- 細菌をコーティングしたてんさい種子を、既存のペレット資材で造粒化すると、菌数は初期値の1/100~1/1000に減少する
(表2)
。コーティングした細菌密度が高い場合には種子発芽率が低下する。
- ペレット造粒後は、5゚Cに保存するとおよそ2カ月間はほとんど菌数は減少しない
(表3)
。
成果の活用面・留意点
- 本試験で見つけた拮抗細菌はテンサイ苗立枯病の生物的防除に利用できる。
- 紙筒育苗で、発病程度が低い場合には利用できるが、発病が激しいときや後期に発生するAphanomycesによる苗立枯病には抑制効果は不十分である。
- ペレット化工程における菌数の減少を防ぐ研究を継続する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:土壌病害を抑制する拮抗微生物を導入したペレット種子の開発
- 予算区分:官民交流
- 研究期間:平成8年度(平成6~8年)
- 発表論文等:根圏細菌によるテンサイ苗立枯病の抑制と拮抗物質生産、日植病報、59(3)、1993
テンサイ苗立枯病およびそう根病を抑制する根圏細菌SB-k88の定着性について、日植病報、60(3)、1994
テンサイ苗立枯病およびそう根病に対するバクテリゼーション-拮抗細菌の選抜とペレット種子への導入などの効果的利用法-、北海道フロンティア研究会年報、6-7、1995-1996