根圏細菌によるテンサイそう根病の発病抑制

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要約

根圏細菌SB-K88菌株の紙筒育苗てんさい苗の根浸漬処理は、そう根病汚染圃場における葉の黄化症状を1~3ヵ月間遅延させる。また、本菌株を付着させた担体の土壌混合により約3週間発病を抑制できる。

  • 担当:北海道農業試験場・畑作研究センター・環境制御研究チーム
  • 連絡先:0155-62-9276
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:工芸作物類
  • 分類:研究

背景・ねらい

テンサイそう根病は根こぶ病菌科に属するPolymyxa betae菌によって媒介される土壌伝染性ウイルス病である。媒介菌の生存期間が長いため輪作など耕種的防除法による効果は低く、有効な薬剤も無い。そこ で、そう根病に対して発病抑制効果のある拮抗微生物を見つけ、その施用法の検討を行い、そう根病の発病を軽減させる技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • そう根病激発圃場に栽培されたてんさいの細根から、そう根病の発病を抑制する根圏細菌(SB-K88)を得た。この菌株は、石英砂で栽培したてんさいにかん注処理した場合、細菌濃度が高いほど、また、媒介菌濃度が低いほど発病抑制効果が高い (図1) 。
  • 紙筒育苗てんさい苗を細菌懸濁液で浸漬処理した後に汚染圃場に移植すると、少発生圃場で約3ヵ月、中発生圃場で1.5ヵ月、発病による葉の黄化が遅延する (表1) 。 これは、病原ウイルスの初期感染の抑制に起因すると考えられる。この時、細根に定着したSB-K88菌株の全細菌に占める割合は移植16日後で1/5、 1ヵ月後で1/100、2ヵ月後で1/1000、3ヵ月後で1/2000であり、全細菌数に占めるSB-K88菌株の割合が高いほど効果も高い。
  • バーミキュライトや粉砕した炭を担体とする細菌処理担体を10%濃度で汚染土壌に混合すると、ELISA法で測定したウイルス濃度(吸光値)により評価した発病が約3週間抑制される (図2) 。

成果の活用面・留意点

  • 根圏細菌単独での抑制効果には限界があり、他の手段との併用による防除法の開発が必要である。

具体的データ

図1 石英砂で栽培したてんさいのそう根病の発病に及ぼす根圏細菌及び遊走子濃度の影響

表1 圃場における葉の黄化程度(SPAD値)によって評価したそう根病の発病抑制

図2 担体を利用した拮抗細菌SB-K88菌株によるそう根病発病抑制効果

その他

  • 研究課題名:テンサイそう根病の生物的防除法の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成8年度(平成4~8年)
  • 発表論文等:根圏細菌のバクテリゼーションによるテンサイそう根病の抑制、てん菜研究会報、36、1994