春小麦のアカクローバ間作によるダイズシストセンチュウ密度低減効果

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要約

春小麦にアカクローバを間作することによってダイズシストセンチュウ(SCN)の密度を減少させることができ、その効果は間作当年よりも翌年の方が大きい。これにより小麦のアカクローバ間作は、豆類におけるSCN防除に適用できる。

  • 担当:北海道農業試験場・生産環境部・線虫研究室
  • 連絡先:011-857-9247
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物虫害
  • 対象:豆類
  • 分類:指導

背景・ねらい

ダイズシストセンチュウ(SCN)の非寄主植物アカクローバは、SCN卵の孵化をよく促進し、孵化した幼虫を餓死させることにより密度を低減させる作用を 有している。そこで豆類におけるSCNの被害を軽減するため、アカクローバを作付体系の中に有効に活用する方法として、小麦に間作した場合のSCN密度低 減効果の有無、その程度等を調査し、間作栽培での有効性を検討、環境調和型農業推進に資する。

成果の内容・特徴

  • SCN卵密度は、アカクローバ間作当年の1995年秋には、対照の小麦単作区が初期密度の70%程度に低下したのに対し、アカクローバ間作区では 40%程度に減少した。また、翌年もアカクローバ間作区ではその残留孵化促進効果によると考えられる密度低下が顕著に表れ、1996年8月1日時点では試 験開始時密度の10%未満となった。単年度ごとでは、アカクローバ間作による密度低減効果は、間作当年よりも翌年の方が大きく表れる結果となった (図1) 。したがって、小麦にアカクローバを間作することにより、豆類の重要害虫であるSCNの密度低減を図ることができ、その効果は翌年に非寄主作物を栽培することによってさらに大きくなる。
  • アカクローバ間作による小麦の収量は小麦を単作した場合の収量とほぼ同等であった (表1) 。
  • アカクローバを緑肥として鋤込んだ後のばれいしょ収量は増加した (図2) 。

成果の活用面・留意点

  • SCN総合防除の一手法として利用できる。
  • アカクローバの栽培は、小麦への間作緑肥としての栽培法に準ずる (表1) 。
  • 小麦収穫後は、アカクローバの生育量を十分に確保することが重要である。
  • アカクローバでネコブセンチュウ類が増殖した場合は、後作としてネコブセンチュウ感受性作物の導入は避ける。
    平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分 課題名:春小麦のアカクローバ間作によるダイズシストセンチュウ密度低減効果(指導参考)

具体的データ

図1 アカクローバ間作によるダイズシストセンチュウ卵密度低減効果

表1 春小麦収量

図2 後作物(ばれいしょ)の収量

その他

  • 研究課題名:孵化促進物質の利用によるダイズシストセンチュウ防除技術の確立
  • 予算区分:一般別枠(安全性向上)
  • 研究期間:平成8年度(平成3~7年)
  • 発表論文等:ダイズシストセンチュウ防除技術としてのアカクローバの間作、日本線虫学会講要、1996