素掘りラグーンに貯留したスラリーが浅層地下水の全窒素濃度に及ぼす影響

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要約

地下に難透水層とその直上に透水性の高い滞水層を持つ緩傾斜面に掘削した素掘りラグーンに、粘度の低い低濃度のスラリーを投入すると、投入直後から急速に周辺の浅層地下水を汚染し、その影響は約3ヶ月後でも認められる。

  • 担当:北海道農業試験場・草地部上席研究官、草地管理・地力研究室
  • 担当:北海道農業試験場・生産環境部・土壌特性・微生物研究室
  • 連絡先:011-857-9237 011-857-9241
  • 部会名:生産環境、畜産・草地(草地)
  • 専門:環境保全
  • 対象:
  • 分類:指導

背景・ねらい

フリーストール方式の牛舎が導入されるに伴い、大量の家畜排泄物をスラリーにして処理する例が増加している。しかし、スラリー処理施設の設置が整わず、 素堀りのラグーンに貯溜する事例が出始めている。このような処理は、周辺の地下水、ひいては水系に悪影響を及ぼす可能性がある。そこで本研究では素堀りラ グーンにスラリーを貯溜した場合の影響を浅層地下水中の全窒素濃度の追跡により明らかにする。

成果の内容・特徴

北海道農業試験場内で、地下2m以内に難透水層が、その直上に透水性の高い(飽和透水係数10-2cm/秒オーダー)滞水層がある緩傾斜面(傾斜度 1.7○)に素掘りのモデルラグーン(直径10m、深さ1.8m;写真)を造設し、雑排水により希釈され極めて粘度の低い乳牛のスラリー(全窒素濃度は 0.08%)を2回に分け計125トン投入した。ラグーンの周辺に配置した地下2mまで達する地下水採取管より浅層地下水を採取し、全窒素濃度を定量し た。また、ラグーン内のスラリーの水深を測定した。地下水の全窒素濃度が2mgN/L以上(投入前の最高値は1.2mg/L)の場合をスラリーの影響と判 断した。

  • 影響範囲は斜面の最大傾斜方向(等高線と直交する方向)へ拡大する (図1) 。
  • 影響範囲は投入直後から急速に拡大し、9日後以降は縮小に転じる (表1) 。その影響は、最盛期にはラグーンの斜面下方75mまで、85日後に於いてもラグーンの斜面下方15mまで認められる。
  • ラグーン内のスラリーの水深は、スラリー投入直後に著しく低下し、投入10日後以降は緩慢になるが、54日後まで低下し続ける (図2) 。54日後のスラリーの水深は、投入した全スラリーの水深相当値に、降水による増加を加算し、蒸発による減少を減算した計算値の77%となり、残り23%相当分のスラリーは漏出したと推定される。
    写真

成果の活用面・留意点

  • 本成果は素掘りラグーンによる地下水汚染に対する評価の判断材料となる。
  • 本成果は比較的低濃度のスラリーまたは尿汚水を透水性の高い土壌で素掘りラグーンに貯留した場合のスラリーの漏出予測の参考となる。
  • 粘度の高いスラリーを用いた場合、土壌の透水性、設置地点の傾斜度が異なる場合等、条件が異なるときは別途検討を要する。
    平成8年度北海道農業試験成績会議における課題名及び区分 課題名:素掘りラグーンに貯留したスラリーが浅層地下水の水質に及ぼす影響(指導参考)

具体的データ

図1 地下水へのスラリーの影響の広がり

表1 地下水へのスラリーの影響の経時変化

図2 ラグーン内のスラリーの水深の経時変化

写真 試験用ラグーン

その他

  • 研究課題名:草地の環境保全機能の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成8年度(平成6~10年)
  • 発表論文等:日本土壌肥料学会講演要旨集、42、1996