大型野菜貯蔵施設の機能と経営経済効果

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要約

大型野菜貯蔵施設の利用上の機能は、1生産者からの集荷、2長期貯蔵・長期出荷、3調製処理の効率化、4予冷処理・短期貯蔵、の4点に整理できる。ながいもを事例として、その経営経済効果を試算すると、利用することによる利益が利用コストを上まわっており、経済性のある施設として評価できる。

  • 担当:北海道農業試験場・畑作研究センター・流通システム研究チーム
  • 連絡先:0155-62-9281
  • 部会名:総合研究(農業経営)
  • 専門:経営
  • 対象:根菜類
  • 分類:行政

背景・ねらい

近年、遠隔地の野菜産地において、大型野菜貯蔵施設の整備が進んでいる。これは、産地の発展にとって有効な施設と なりうるものであるが、その一方で高額の固定資本であり、有効に機能しなければ、産地に大きな経済的負担を強いるだけのものとなってしまう。そこで、大型 野菜貯蔵施設の機能を整理するとともに、その経営経済効果と利用コストを試算することで、経済性を評価し、今後の施設整備および利用の指針を提示する。

成果の内容・特徴

  • 大型野菜貯蔵施設の利用は、多くの施設で収穫時期にはほぼ満杯状態となるが、農業生産の季節性に規定され、ほとんど遊休化する時期があるため、年間を通じた利用率は50%程度となる(図1)。複数品目で利用することで、利用率の一定の改善は望めるが、地域によって野菜の収穫時期は限定されるため、大幅な改善とはならない。
  • 大型野菜貯蔵施設の機能は、1生産物の集荷場所であり、生産物を収穫後早期に全量集荷し、販売主体の実質的管理下に置かせる機能、2長期貯蔵することで、 長期・周年出荷を可能とする機能、3調製処理を計画的に長期・平準化し、調製処理施設の稼動日数を増やし、操業度を高める機能(表1)、4予冷処理・短期貯蔵することで、鮮度保持し、出荷地域を広域化する機能、の4点に整理できる。
  • 大型野菜貯蔵施設の経営経済効果と利用コストを、ながいもを事例として試算すると(表2)、 経営経済効果は、長期・周年出荷することにより、高価格時にまで出荷を延長することで、平均価格を約10%、約30円/kg上昇させ、調製処理施設の処理 能力に比べた処理数量を増加することによる減価償却費の削減などにより、約10円/kg処理コストを削減している。一方、利用コストは10~15円/kg と試算される。さらに周年出荷を可能とすることで、長期的には需要量を約2.5培に増加させることができると推計される。したがって、大型野菜貯蔵施設は 高い経済性を持つ施設と評価できる。
  • 農協等によって運営されている大型野菜貯蔵施設の利用料金は、利用コストのみでなく、対象野菜の収益性や産地振興を考慮して設定され、そのために利用料金 が利用コスト以下となり、結果として施設利用事業としては赤字となる場合が多々ある。したがって、いっそうの有効利用と経営管理面での改善と原則の確立が 求められている。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、遠隔地の大規模畑作地帯である十勝地域を対象とし、ながいもを主な施設利用品目とする事例の実態調査によるものである。ながいもは輸入野菜との 競合がなく、周年供給の有利性が高い品目であるなど、調査地域、品目の特性が反映した事例であり、他の地域で適用する場合は、地域の特性、対象品目の品目 特性を考慮する必要がある。

具体的データ

図1.B農協野菜貯蔵施設の利用状況

 

表1.ながいも選別施設の稼働状況

 

表2.大型野菜貯蔵施設の経営経済効果と利用コスト

その他

  • 研究課題名:農産物の貯蔵・流通に関する調査・研究
  • 予算区分:依頼(北海道開発局)
  • 研究期間:平成9年度(平成6年~9年)
  • 研究担当者:徳田博美
  • 発表論文等:十勝地域の野菜生産・出荷システムと大型貯蔵施設の機能、第12回アリスレポート、北海道開発局帯広開発建設部、1997