疾病の影響量予測による泌乳データの補正
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要約
乳房炎および消化器疾患の治療日数が、搾乳日数を短縮させ、乳房炎が無脂固形分率を低下させる。疾病の治療日数と産乳との間には直線的な関係があり、遺伝能力推定の際、疾病の泌乳データに与える影響を補正できる。
- 担当:北海道農業試験場・畜産部・家畜育種研究室
- 連絡先:011-857-9270
- 部会名:畜産・草地
- 専門:育種
- 対象:家畜類
- 分類:研究
背景・ねらい
泌乳能力発現に影響を与える環境要因は、分娩年次や分娩季節、地域など、多くの個体が同様に影響を受けるもの(以下、牛群環境とする)と、病気やケガ、繁殖などのように各個体が特異的に受けるもの(以下、個体環境とする)に大別できる。このうち個体環境は、平均値として扱うことができないため、遺伝能力推定の正確度を下げる要因の一つとなっている。そこで個体環境の内、乳生産に影響を与える疾病について、その種類と影響の程度を解明する。
成果の内容・特徴
- 乳生産に与える疾病の影響の解析には、当場牛群における1993年1月1日~1996年12月31日の管理記録(182頭5,495件)を、産次(初産,2産,3産以上)毎に整理した、乾乳期130頭、泌乳初期218頭の疾病記録を用いた。乳生産(搾乳日数,305日乳量,乳脂率,乳蛋白質率,SNF率)に対して、乾乳期および泌乳初期における疾病(乳房炎,肢蹄障害,消化器疾患)の影響を分散分析法により解析した。解析において、各疾病を治療日数により4階層(治療なし,治療1~7日,治療8~14日,治療15日以上)に分けた。また、疾病の影響を受けると考えられたものついて、階層分けしない治療日数との直線的関係について、共分散分析法により回帰分析した。
- 乳生産への乾乳期疾病の影響
- 搾乳日数は乳房炎の影響を受け(p<0.05)、治療15日以上で短くなった(p<0.05)。乳房炎治療日数は搾乳日数に対し、負の回帰係数(p<0.1)を持つ (表1)。
- 乳生産への泌乳初期疾病の影響
- 搾乳日数は乳房炎の影響を受け、治療15日以上で短くなる傾向がみられた。乳房炎治療日数は搾乳日数に対し、負の回帰係数(p<0.1)を持つ (図1)。
- 搾乳日数は消化器疾患の影響を受け(p<0.05)、治療8日以上で短くなる傾向が見られた。消化器疾患治療日数は搾乳日数に対し、負の有意(p<0.01)な回帰係数を持つ (図2)。
- SNF率は乳房炎の影響を受け、治療8日以上で低くなる傾向がみられた。乳房炎治療日数はSNF率に対し、負の有意(p<0.05)な回帰係数を持つ
成果の活用面・留意点
- 産乳と治療日数との直線的な関係から、疾病の影響量を推定できる可能性が示され、産乳の遺伝能力予測の際、疾病の泌乳データに与える影響を補正できる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:個体環境が泌乳能力発現に与える影響の解析
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成5年~平成9年度
- 研究担当者:佐々木修、富樫研治、山本直幸
- 発表論文等:
第92回畜産学会大会(平成9年)で「乳房炎感染等の疾病の有無が乳量に与える影響」として発表
第94回畜産学会大会(平成10年)で「乳牛の繁殖および乳生産への疾病の影響」として発表予定