高泌乳牛におけるGnRH剤に対する下垂体LH放出能の分娩後の推移

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要約

GnRH剤投与により高泌乳牛の下垂体LH放出能を調べたところ、分娩後30日目・60日目と比べ10日目では、LH濃度のピーク値および放出量は低下している。

  • 担当:北海道農業試験場・畜産部・生理・繁殖研究室
  • 連絡先:011-857-9268
  • 部会名:畜産・草地
  • 専門:繁殖
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

分娩直後の乳牛では排卵等で重要な役割を担う下垂体内の性腺刺激ホルモン(LH)の含量が極めて少なく、LHの蓄積がある程度すすむ分娩後3週頃までには下垂体のLH分泌能が回復すると報告されている。しかし高泌乳牛については、十分に検討された報告は少ない。そこで分娩後の各時期に性腺刺激ホルモン放出ホルモン類縁体である酢酸フェリチレリン(GnRH剤)を投与し、下垂体からのLHの放出量・パターンおよび投与前後の卵巣動態を調べ、分娩後の経過に伴う高泌乳牛の下垂体LH放出能の推移を調べた。

成果の内容・特徴

  • 2~3産次の正常分娩後の高泌乳牛のべ25頭(305日乳量:9466±579kg)を供試し、GnRH剤に対する下垂体LH放出能を解明するため、分娩後10日目(10日群:9頭)、または28~32日目(30日群:10頭)、57~63日目(60日群:6頭)にGnRH剤200μgをそれぞれ1回筋肉内投与し、経時的な血中LH濃度の推移を調べた。血液中LHのピーク濃度とLH放出曲線下部面積は、分娩後10日群では30日群・60日群に比べ有意に低かったが(P<0.05)、30日群と60日群の間に有意差は認められなかった(図1)、 (表1)。
  • 分娩後から1でのGnRH剤投与の2カ月後以後まで、卵巣動態を観察し血中プロジェステロン濃度の測定を行った。10日群ではGnRH剤投与日までに排卵した個体はなく、全例で投与後2日以内(分娩後12日まで)に排卵が観察された。この内訳は、1排卵が6頭、2排卵が2頭、3排卵が1頭であった。一方、30日群・60日群で分娩後12日までに排卵した個体はいなかった。10日群の全個体で初回排卵後に短性周期を示すことなく正常性周期を再帰した(図2)。以上の結果から分娩後10日目の高泌乳牛においても、GnRH剤投与による性周期再帰の人為的誘起が可能な下垂体LH放出能であることが示唆された。

成果の活用面・留意点

  • 人為的な性周期回復誘起後の人工授精による受胎率等については検討していない。
  • 初産牛については検討していない。

具体的データ

図1.GnRH剤投与に対するLH放出の分娩後の変化

 

表1.GnRH剤投与前後の血中LH濃度

 

図2.分娩後10日にGnRH剤投与した個体血中プロジェステロン濃度の推移の例

 

その他

  • 研究課題名:分娩後の下垂体機能の特性解明とその制御技術の開発
  • 予算区分:特別(高品質乳)
  • 研究期間:平成8年度(平成6年~平成8年)
  • 研究担当者:角川博哉、仮屋堯由(現畜試)、高橋ひとみ(現畜試)、山田豊
  • 発表論文等:乳牛における下垂体LH放出能の分娩後の変化、第88回繁殖学会講演要旨集、1995