紅色雪腐病菌が低温ストレスで特異的に発現する遺伝子
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要約
紅色雪腐病菌(Microdochium nivale)が低温ストレスに応答して発現する6種の遺伝子を単離した。低温特異的プロモーターとして機能する紅色雪腐病菌のゲノムDNAを単離した。
- 担当:北海道農業試験場・地域基盤研究部・越冬ストレス研究室
- 連絡先:011-857-9276
- 部会名:基盤研究
- 専門:バイテク
- 対象:微生物
- 分類:研究
背景・ねらい
物の低温耐性の強化には、生育適温域での健全な生育に影響を与えるこなとく、低温ストレスでのみ効率的に遺伝子が発現するプロモーターシステムの開発が重
要であるが、植物では未だ着手されていない。そこで本課題では、構造が簡単で常温域(20°C)及び低温域(0°C)で共に病原菌として活動し、かつ、低温耐
性機構を持つ糸状菌である紅色雪腐病菌(Microdochium nivale)を利用して低温誘導遺伝子及び低温特異的プロモーター領域を単離し、その低温耐性機構について解析する。
成果の内容・特徴
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生育適温(20°C)で3日間培養後、0°C6時間の低温処理を行った菌体からcDNAライブラリーを作成し、ディファレンシャルスクリーニング法により0°Cで発現が見られる6種類のcDNAを単離した。
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単離したcDNA(MnLE1~6)の培養温度(0~30°C)、0°C処理時間(1~72時間)によるmRNAの発現量の変動を解析し、遺伝子発現様式の異なる4種類のタイプに類別できた(
表1
)。
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単離した各cDNAの塩基配列を決定し、その構造を解析したところ、MnLE-4が各種生物のカタラーゼ遺伝子と高い相同性を示した。他の5種の遺伝子は、既知遺伝子との相同性を示さなかった(
表2
)。
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紅色雪腐病菌のゲノムDNAの断片をレポーター遺伝子(β-ガラクトシダーゼ遺伝子)とともに酵母に導入し、10°C、20°Cおよび30°Cで培養したとこ
ろ、生育適温よりも低い、10°Cおよび20°Cの温度でβ-ガラクトシダーゼ遺伝子の発現を誘導する低温特異的プロモーターが見いだされた(
図1
)。
成果の活用面・留意点
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低温ストレスで発現する6種の遺伝子が単離された。今後、これらを作物や微生物に導入することにより低温ストレス耐性の増強を図る必要がある。
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低温応答性プロモーター領域が見いだされたので、今後、低温条件での物質の生産系の開発に利用できる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:好冷性微生物に由来する低・氷温特異的プロモータシステムの開発
- 予算区分 :バイテク先端技術研究(バイテク植物育種)
- 研究期間 :平成10年度(平成8年~10年)
- 発表論文等:低温適応性植物病原糸状菌Microdochium nivaleの低温誘導性遺伝子の単離及び解析,
日本農芸学会報72,p55,1998.低温適応性糸状菌Microdochium nivaleの低温誘導性遺伝子及びプロモー
ター領域の解析,平成11年度日本農芸学会大会発表予定,1999.