ばれいしょの紙筒移植栽培によるそうか病の発病回避

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要約

ばれいしょ健全苗の紙筒移植栽培により、そうか病汚染土での発病が回避される。本手法は、病原菌に感受性の高い、初期の未熟新塊茎を紙筒により隔離し、その後は塊茎肥大に伴う抵抗力の増加を利用するものである。

  • 担当:北海道農業試験場・生産環境部・病害研究室
  • 連絡先:011-857-9277
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:いも類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ばれいしょの主要生産地帯で、難病であるそうか病による被害が大きな問題となっている。現在、決め手となる防除法は確立しておらず、その対策が急がれている。本病の初期感染は新塊茎形成初期であるとされている。本研究は、この時期の発病を回避する方法として、ばれいしょの紙筒移植栽培に着目し、これによる 発病軽減あるいは回避の可能性を検討した。

成果の内容・特徴

  • マイクロチューバあるいは無病種いも切断塊茎を紙筒(規格5号:V-5-7.5H、径5cmx高さ7.5cm)内の無病育苗土に播種する。2週間~1.5カ月間育苗したのちStreptomyces turgidiscabiesによるそうか病汚染土に紙筒移植栽培すると、紙筒を剥がして移植した栽培あるいは慣行の直播栽培に比較して、発病が著しく軽減する(図1及び2)。
  • 品種「男爵薯」を用いた試験では、紙筒の口径が大きいほど、発病回避の効果が高くなる(図2)。
  • 紙筒内育苗土への病原菌接種位置と発病との関係みると、種いもの周りに形成される新生塊茎は、病原からわずかに離れただけで、発病が減る(表1)。
  • 紙筒内の新生塊茎の肥大に伴い紙筒が破れるが、病原菌に対する抵抗力は塊茎の肥大と共に増加する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、無病の種いもと育苗土を用い、そうか病菌に汚染した圃場に適用する。ばれいしょの早期出荷(前進)栽培地帯での適用が期待されるが、技術の普及にあたり、特にS.scabies発生地帯での現地実証試験が必要である。
  • 現地実証試験にあたり、ばれいしょの既往の紙筒育苗技術や紙筒移植機械化技術(昭和62年度北海道農業試験会議指導参考事項)や現行の移植栽培技術を参照する。
  • 紙筒移植栽培にあたり初行に品種間差がみられる場合があり、品種特性を明らかにする必要がある。

具体的データ

図1 紙筒移植栽培による発病回避効果

図2 紙筒の大きさと発病回避の程度

表1 病原菌の接種部位と発病との関係

図3 塊茎のステージと発病との関係

その他

  • 研究課題名:ジャガイモそうか病の抵抗品種利用法の解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成10年度(平成10~12年)
  • 発表論文等:ジャガイモの移植栽培によるそうか病回避の可能性,日本植物病理学会報,64,p.580,1998