黒ボク土微生物バイオマス変動のくん蒸法による比較

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要約

くん蒸抽出法/くん蒸培養法で黒ボク土バイオマスを比較すると、畑地化などの土地利用の変化はバイオマス比活性を増大させた。バイオマス構成の変化は同位体炭素を用いたバイオマス画分の抽出性や分解性の差異によって評価される。

  • 担当:北海道農業試験場・生産環境部・上席研究官
  • 連絡先:011-857-9232
  • 部会名:生産環境
  • 専門:土壌肥料
  • 対象:
  • 分類:研究

背景・ねらい

土壌微生物バイオマスは作物に対する安定的な養分供給源として、環境保全型農業における土壌肥沃度管理の上で重要な役割を担う。その動態は土壌型、植生、土壌管理などの影響を受けことから、本研究では道内に広く分布する黒ボク土を対象として微生物バイオマス変動を測定法との関連で解析した。

成果の内容・特徴

  • 多湿黒ボク土畑地土壌、同林地土壌及び淡色黒ボク土畑地土壌(いずれも北海道農試土壌)を対象として、クロロホルムによるくん蒸抽出法及びくん蒸培養法によるバイオマス等を1996年5月~11月にかけて測定した。また、微生物バイオマスとして評価される画分の特徴を明らかにするために、土壌に少量の同位 体炭素を添加し、バイオマスに取り込まれた炭素を両くん蒸法を用いて追跡した。
  • 微生物バイオマスは、林地では土壌水分変化や落葉などにより春季と秋季に高く夏季に減少し、畑地では根生育が促進される夏季に増大した。いずれの土壌でも抽出法>培養法で、両法とも林地>畑地、林地では広葉樹林>針葉樹林、畑地では多湿黒ボク土>淡色黒ボク土であった(表1)。バイオマスC当りの呼吸量や土壌ATP含量で示されるバイオマス比活性は森林伐採や畑地化により増大するなど、土地利用法の違いに伴ってバイオマス構成ひいてはバイオマス比活性が変動した。
  • 両くん蒸法は全体として高い相関を示すが(図1)、それぞれ異なる画分も評価すると推察される。同位体炭素を土壌に添加して微生物バイオマスに取り込ませると、クロロホルムくん蒸による死滅菌体からのフラッシュCとバイオマスCとの比は一般値(0.45)よりも低く、また、いずれの土壌でも抽出法>培養法となった。培養法では林地と畑地とで差がないが、抽出法では林地>畑地であり、両法は抽出性や分解性に多少とも異なるバイオマス画分を評価していると推定された(表2)。
  • 林地と畑地ではその利用法によって微生物社会の構成や微生物と土壌構成物質との相互作用が異なると推察され、くん蒸法から得られるパラメータを比較することにより、土壌微生物フロラを評価する可能性が示された。

成果の活用面・留意点

  • 本研究は普通畑土壌、林地及び草地を対象にしており、集約野菜畑や連作ほ場での微生物バイオマスは検討していない。

具体的データ

表1 植生や土壌型がバイオマス炭素及びその活性に及ぼす影響

図1 くん蒸抽出法によるバイオマスCとくん蒸培養法によるフラッシュCとの関係

表2 黒ボク土に添加した13Cの行方とくんによるフラッシュC画分への移行

その他

  • 研究課題名:寒地土壌における微生物生態の特性解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成10年度(平成8~10年)
  • 発表論文等:Microbial biomass properties in andosols of different types, land use and cropping practices, 第16回国際土壌科学会議(1998).日本微生物生態学会等