下水汚泥施用によるフォスファターゼ活性とりん酸供給能の増大

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要約

黒ボク土に下水汚泥コンポストを施用すると、酸性フォスファターゼ(pH4.9)活性が増大する。インゲンマメやトウモロコシ栽培ほ場におけるフォスファターゼ活性の増大は作物へのりん酸供給能を増大させ、作物生育の増加、ひいては収量の増加をもたらす。

  • 担当:北海道農業試験場・生産環境部・土壌特性・微生物研究室、上席研究官
  • 連絡先:011-857-9232
  • 部会名:生産環境
  • 専門:肥料
  • 対象:
  • 分類:研究

背景・ねらい

畑地への有機物施用は有限の資源であるりんの有効利用法の一つであるが、りんに関しては有機物施用効果の知見は少ない。そこで、麦わらや堆きゅう肥、下水汚泥コンポストなどの有機物を施用した黒ボク土で、有機態りんを作物が吸収できる無機態りんに有効化する酸性フォスファターゼ活性(pH4.9)を測定し、同時に作物生育・収量との関連を調査することによって、りん動態から見た有機物の施用効果を評価する。

成果の内容・特徴

  • 黒ボク土に有機物を添加して25°Cで培養すると、対照土壌に比べ、下水汚泥コンポスト(10t/ha相当量)を添加した土壌で酸性フォスターゼ活性が高まった。しかし、牛糞きゅう肥(40t/ha相当量)や無機りん資材(0.5tP2O5/ha相当量)を施用した土壌では、対照土壌の酸性フォスファターゼ活性とほとんど差がなかった(図1)。
  • 黒ボク土ほ場に下水汚泥コンポストを5~20t/ha施用して、インゲンマメ及びトウモロコシを栽培した場合、重過石を0.15~2kgP2O5/ha施用した場合よりも酸性フォスファターゼ活性(pH4.9)が高まった(図2)。また、土壌の有効態りん酸レベルが約15~65mgP2O5/100g乾土の範囲では、下水汚泥コンポストの施用による酸性フォスファターゼ活性の増大とともにインゲンマメ及びトウモロコシの生育後期におけるりん酸吸収量増大をもたらした(図3)。
  • 黒ボク土での作物生育は有効態りん酸レベルが制限要因となるが、下水汚泥コンポスト5~20t/haの施用は重過石0.15~2kgP2O5/haの施用に比べて、インゲンマメの地上部生育ひいては収量を増加させ、初期生育が土壌の有効態りん酸レベルに強く依存するトウモロコシでも生育を増大させた(図4)。しかし、トウモロコシ収量では資材間差がなかった。

成果の活用面・留意点

  • 下水汚泥コンポストを取り入れた有機質資材の調製方法の改善によってりん資源の有効利用ができ、環境保全的な農業システムに寄与できる。
  • 下水汚泥コンポストには石灰や重金属類が含まれるため、施用基準を守ること。

具体的データ

図1 土壌への有機物添加によるサンセイフォスファターゼ活性の変化

図2 土壌の有効態リン酸の増大と酸性フォスファターゼ活性との関係

図3 作物のリン酸吸収量に及ぼす酸性フォスファターゼ活性と施用資材の影響

図4 生育後期の地上部乾物重に及ぼす土壌の有効態リン酸レベル及び資材施用の影響

その他

  • 研究課題名:バイオマスりん代謝関連微生物の動態解明
  • 予算区分 :一般別枠(物質循環)
  • 研究期間 :平成10年度(平成4~10年)
  • 発表論文等:りんの土壌-作物系での動態に及ぼす微生物的影響-汚泥コンポストの影響,日本土壌肥料学 会講演要旨集,42,298 (1997) 他