作物残渣窒素のフローと土壌ストック形成

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要約

北海道の畑地における主要作物残渣の窒素は、すき込み後5作目までに、17~36%(10~46kgNha-1)放出される。一方、残渣窒素の38~76%は土壌へストックされる。フローとストック形成に関与する土壌微生物バイオマスには最大2.7~9.7%相当取り込まれ半減期490~980日で徐々に減少する。

  • 担当:北海道農業試験場・畑作研究センター・生産技術研究チーム
  • 連絡先:0155-62-9274
  • 部会名:生産環境
  • 専門:土壌
  • 対象:
  • 分類:研究

背景・ねらい

土壌の有機物循環機能は、作物への養分供給を担うだけでなく、近年では、廃棄有機物による環境負荷を低減させる要として重要性が高まっている。そこで、畑地における主要投入有機物である作物残渣について、窒素フローと土壌へのストックを15Nトレーサー法により解明する。

成果の内容・特徴

  • 北海道の畑地における作物残渣からの窒素放出(後作物に利用可能窒素)量は、すき込み後1作目にはテンサイ残渣で16~27kgNha-1(放出率15~20%)、トウモロコシ残渣で8~21kgNha-1(放出率8~21%)、コムギ残渣で4~6kgNha-1(放出率6~12%)、2作目にはそれぞれ7~11、5~7、3~4kgNha-1、その後、わずかとなる。その放出量は、褐色低地土で大きく、褐色火山性土で小さい。( 図1)
  • 作物残渣窒素の土壌への残存率は5作付け後の跡地(すき込み後53ヶ月)で38~76%と高く、作物残渣窒素は、後作物への直接的な養分フローより土壌ストック形成の役割が大きい。(図2)
  • 作物残渣窒素のフローとストックを制御する土壌微生物バイオマスは、すき込み後1作期間中に、残渣窒素から、最大2.7~9.7%相当を取り込む。その後、微生物バイオマスに取り込まれた残渣窒素量は、1作目後期以降、半減期490~980日で徐々に減少する。( 図3)

成果の活用面・留意点

  • 土壌へ投入される各種有機物窒素の動態を推定する基礎資料として活用できる。
  • 土壌微生物バイオマス特性に及ぼす残渣種と土壌型の影響については明確にすることができず、今後の課題である。

具体的データ

図1 後作物への残渣窒素放出量

図2 5作付け後の残渣窒素の分布

図3 土壌微生物バイオマスに取り込まれた残渣窒素比率の推移

その他

  • 研究課題名:北部地域畑地における土壌ストック形成と養分フロー
  • 予算区分 :物質循環
  • 研究期間 :平氏江10年度(平成4~10年)
  • 発表論文等:残渣の土壌への残存と微生物バイオマスへの分配,土壌肥料科学会講要集,p.168, 1997