デルファイ法を応用した中山間地域の定住条件評価手法

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要約

デルファイ法を応用した本手法は、客観評価(統計・実測データによる)と達観評価(地元有識者による主観的評価)を組み合わせることによって、地元意向をより反映させながら、中山間地域の定住条件を集落単位に評価できる。

  • 担当:北海道農業試験場・総合研究部・動向解析研究室
  • 連絡先:011-857-9308
  • 部会名:総合研究(農業経営)
  • 専門:農村計画
  • 分類:行政

背景・ねらい

中山間地域独自の土地利用計画手法の確立のため、「農林地の主たる管理主体である農家が、ある程度快適に居住していけるか」といった定住条件から中山間地域の集落を評価する手法を開発する。土地や地域資源の評価手法は実測・統計データによる客観的な評価手法を目指して開発されてきたが、評価結果の妥当性の検証が重要な課題となっていた。いままでは、地元有識者による主観的評価(達観評価)との比較によって検証する方法が採られてきたが、1)達観評価値のバラツキ、2)客観評価値と達観評価値のズレの問題は残されたままである。これらの問題を解決し、地元意向をより反映しうる方法として、デルファイ法を応用した中山間地域の定住条件評価手法を提案する。手法の有効性は、北海道中川町と新潟県入広瀬村に適用することによって検証した。中川町ではキーパーソン(普及員出身の役場職員)によって評価者を選定し(回答者19名)、入広瀬村では農業・農村振興関係の役場職員全員を評価者とした(回答者17名)。

成果の内容・特徴

  • 手法の内容(図1)
    (1)達観評価1回目:地元有識者が集落の定住条件を主観的に評価する(100点満点で何点か?)。同時に、評価する上で「経済・生活・交通・社会・人口・自然のどの条件を重視したか」の配点割付(100点満点)を行う。
    (2)客観評価:研究者が表1に基づいて、各条件(経済・生活・・・・)の得点(20点満点)を求め、次式に従って算出する。なお、算出式の重み係数は(1)の配点割付集計結果にもとづく(比例配分)。

        Y=aX1+bX2+cX3+dX4+eX5+fX6
             Y:定住条件の客観的評価値
             X1~X6:順に経済・生活・交通・社会・人口・自然条件の得点
             a~f:重み係数
    

    (3)達観評価2回目:1回目結果(平均値・最小値・最大値)及び客観評価結果(指標・評価プロセスも提示)を参考に、地元有識者が再び定住条件を主観的に評価する。

  • 手法の特徴
    (1)一般的なデルファイ法と異なり、2回目評価のときに1回目結果のほか客観評価値も参考にする。また、評価者が専門家(研究者)ではなく地元有識者である。
    (2)一般的な土地や地域資源の評価手法と異なり、達観評価を客観評価結果の妥当性の検証手段として、あるいは客観評価算定式の重みづけのサンプルとして用いるだけではなく、客観評価を「たたき台」として用い、達観評価(2回目)を「出口」とする。

  • 現地検証結果(表2)
    (1)達観評価1回目と2回目の標準偏差の比較及び評価者の動向(図2)から、達観評価値は1回目より2回目の方が収束した。
    (2)達観評価値と客観評価値との差は1回目より2回目の方が小さく、達観評価値と客観評価値のズレは縮小した。

成果の活用面・留意点

  • デルファイ法を応用した客観評価と達観評価の総合化は、中山間地域の定住条件評価だけでなく、様々な土地評価・地域資源評価の場面で適用可能である。
  • 評価者の選定方法には、1)地元側による選定、2)外部専門家による指名がある。どちらの方法をとるかは、適用市町村の状況(キーパーソンの有無など)に応じて使い分ければよい。

具体的データ

図1.デルファイ法を応用した定住条件評価手法

 

表1.客観評価の指標・配点

 

表2.評価結果と方法の効果

 

図2.評価の動向

その他

  • 研究課題名:定住視点からみた中山間地域の評価手法の開発
  • 予算区分:総合研究〔農村経済活性化〕
  • 研究期間:平成11年度(平成9~11年)
  • 研究担当者:福与徳文(現企画科)
  • 発表論文等:
    福与徳文「デルファイ法の応用による客観・達観評価の総合化-中山間地域の定住条件評価を題材にして-」農村計画学会誌第18巻別冊「農村計画論文集第1集」、pp.307-312、1999