北海道の酪農専業地帯における交換分合参加農家の行動の特徴

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要約

北海道の酪農専業地帯における交換分合は、農地集団化と規模拡大が同時進行する特殊な形態をとり、参加農家の行動も、成牛頭数当りの所有農地面積の小さい農家の増加面積が大きい、後継者不在による経営縮小を契機に行われるケースが多いなど特徴的である。

  • 担当:北海道農業試験場・総合研究部・動向解析研究室
  • 連絡先:011-857-9308
  • 部会名:総合研究(農業経営)
  • 専門:経営
  • 分類:研究

背景・ねらい

北海道の大規模農業にとって農地集団化は喫緊の課題である。農地集団化を目的とした制度の一つに土地改良法の交換分合事業があり、同制度に対する期待は大きい。ところが、交換分合事業の実施件数は潜在的需要に対して極めて少ないといわれている。全国の事業実績の9割以上(1981~98年の事業地区面積)を占める北海道でも、近年、事業件数は減少し、実施自治体も一部市町村に限定されているのが実情である。北海道の交換分合は、経営縮小農家の跡地再編を契機に行われ、農地集団化と規模拡大が同時進行するという極めて特殊な形態をとっている。そこで、北海道において交換分合事業がより活用されるための基礎的知見として、交換分合における農家の行動を明らかにする。ここでは、道内一の事業実績を上げている根釧地域B町の事業地区(1985~97年の28地区、559戸)を分析対象とする。

成果の内容・特徴

  • 交換分合に参加した営農継続農家は、不参加農家と比べて所有農地は分散しており、農地集団化を必要としていた農家である(表1)。一方、交換分合に参加した経営縮小農家は、もともとの経営規模も小さい。
  • 営農継続農家の中では、交換分合前の所有農地面積が小さい農家の方が、交換分合によって規模拡大した。特に、飼養成牛頭数当りの所有面積が小さい農家の増加面積は大きい(表2)。
  • 負債額の小さい農家にとって、経営を縮小する際、交換分合で土地を処分するのが最も有利である。大幅な負債超過農家(所得税法9条の資力喪失)にとっては、どの方法で土地を処分しても同じである(表3)。
  • 交換分合に参加した経営縮小農家のうち、後継者不在を理由としたのは64%で、離農理由の中で「後継者不在」が占めるシェア(B町1994~98年で24%)を大幅に上回る。このように、交換分合は後継者不在による経営縮小(負債小)の土地処分方法として用いられることが多い。
  • 規模拡大を伴う集団化のため、土地改良法102条の「譲渡地と取得地の同等性」と「譲渡地と取得地の面積・価額差2割未満」といった原則から逸脱する傾向にある(表4)。さらに、小規模農家層ほど規模拡大していることが(表2)、小規模農家層の同等性・2割未満原則からの逸脱を助長している(表4)。
  • 同等性・2割未満原則からの逸脱は「本人の同意」があれば制度上可能であり、事業推進上大きな障害にはなっていない。また、1964年の土地改良法改正で、交換分合の目的に「構造改善(その柱の一つが規模拡大)」が加えられてからは、同等性・2割未満原則から逸脱しても必ずしも法の趣旨に反しているとはいえない。

成果の活用面・留意点

  • 本情報は、農地集団化手法を開発する研究者の基礎的知見となる。また、いままで交換分合実績のない市町村で交換分合を実施していく場合の参考資料となる。
  • 交換分合事業を推進していく上で制度上検討すべき課題としては、不交換分合・創設交換分合制度(一方的交換)制定の是非、集団化率・移動率といった事業の採択基準のあり方などの問題がある。これらは、本研究で明らかにした参加農家の行動の特徴を参考にして今後検討を加えていく必要がある。

具体的データ

表1.交換分合参加農家の特徴

表2.経営規模別の増加面積

 

表3.土地処分方法の違いによる農家手取り額の試算

 

表4.交換農地面積差が2割以上の農家数

 

その他

  • 研究課題名:北海道における交換分合事業の動向と展開方向
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成11年度(平成11年)
  • 研究担当者:福与徳文(現企画科)
  • 発表論文等:なし