逆浸透膜を利用した高濃度アンモニア含有水の濃縮と浄化
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要約
堆肥化施設における熱交換や除臭に伴って発生する高濃度アンモニア含有水は、硫酸を添加して中和する前処理を行い、逆浸透膜を用いた濾過処理を行うことで、排水可能な水と、液肥としての利用が見込まれる硫酸アンモニウム水溶液に分離することができる。
- 担当:北海道農業試験場・作物開発部・農地農業施設研究室
- 連絡先:011-857-9233
- 部会名:総合研究(農業物理)
- 専門:農業施設
- 対象:家畜類
- 分類:研究
背景・ねらい
堆肥化処理施設において熱交換や除臭をしようとするとき、アンモニア態窒素を高濃度に含む水が発生することがある。この水は通常の汚水と異なり、アンモニアを高濃度に含むが、その他の物質をほとんど含まない特徴がある。無処理で排水することはできないが、濃縮水と排水可能な水に分離できれば、濃縮水は液肥としての利用が見込まれる。そこで、逆浸透膜を利用した濃縮・浄化の可能性を検討する。
成果の内容・特徴
- 試作した膜濾過装置は、逆浸透膜(N社製スパイラル型モジュールES10-D2:膜面積1.8m2 )を組み込んだ装置である。装置の構造は単純で、設置に要する床面積も極めて小さい(図1)。
- 無処理のアンモニア含有水は、逆浸透膜では阻止できない。しかし硫酸を添加して中和する前処理を行い、pH6程度の硫酸アンモニウム水溶液とすることにより、99%以上の高い阻止率((1-濾過液濃度/原液濃度)×100)を得ることができる(図2)。
- 前記の前処理を施した原水のアンモニア態窒素濃度が2000mg/L 程度であれば、供給圧力を2MPa以上で処理することにより、原水の8割以上を排水可能な水に浄化でき、同時に濃度の高い硫酸アンモニウム水溶液を得ることができる(図3)。
- 堆肥舎で回収された結露水に前処理を施し、その7~9割の水量を逆浸透膜で濾過処理すると、濾過水は排水基準(日平均:窒素60mg/L)を下回る水質である(表1)。
- 試作装置では、アンモニア態窒素濃度2000mg/Lの原水の80%を供給圧力3MPaで濾過する条件で、濾過能力が約2m3/日、処理に要する電力量が約6kWh/m3 である。
成果の活用面・留意点
- 逆浸透膜による処理であるので、対象原水の濃度が高いほど高い圧力で処理する必要がある。
- 対象原水が結露水等であれば、有機物や懸濁物質等の含有は極めて少なく、膜は長期間の使用に耐えると予想されるが、膜の寿命については未検討である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:寒冷地における高度堆肥化処理施設の除湿・除臭換気法の開発
- 予算区分:環境研究[家畜排泄物]
- 研究期間:平成11年度(平成6~11年)
- 研究担当者:向弘之