作物と雑草識別のための位置推定による高速画像処理手法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

一定間隔で植え付けられている作物の2値画像から、設定されている条間と株間の値を用いて、作物位置を推定し、画像処理により高速かつ高精度に作物と雑草を識別できる手法である。

  • 担当:北海道農業試験場・作物開発部・農業機械研究室
  • 連絡先:011-857-9265
  • 部会名:総合研究(農業物理)
  • 専門:機械
  • 対象:葉茎菜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

環境への配慮から、除草剤等の農薬の使用をできるだけ抑えた栽培管理技術が求められており、畝間と株間の物理除草技術やスポット防除技術の開発が望まれている。そのためには作物の株位置やその大きさを正確かつ、リアルタイムで計測することのできるセンシング手法が不可欠である。そこで、一定間隔で植え付けられている作物の画像から、高速かつ高精度に作物の株の位置と大きさ(投影面積)を認識できる手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本手法は図1に示す処理手順によって、図2の白抜きで示す2値化により作物を抽出した画像から株の位置を推定して高速に作物を認識することができる。株位置の推定は、設定された条間と株間の値と抽出部の画素数から周期性のあるデータの解析に用いられるフーリエ級数によって、図3に示すように列と株の画像端からの距離を計算して行う。作物の位置と大きさは、その推定位置の周囲に設定した探索範囲(関心領域)内にある抽出部分から求める。なければ欠株であり、探索範囲外にある抽出部分は雑草等と判断する。
  • 表1に示すように、本手法によって近赤外画像を処理した場合の処理時間は、4条×4株~5株が含まれる画像1枚あたり、キャベツで0.46秒、ハクサイが0.51秒、識別率はそれぞれ84%、91%と、高速に処理することができ、かつ高い識別率が得られる。なお、探索範囲は、条方向、株方向ともに、±100mmに設定している。
  • 本手法は、作物の植え付け位置に誤差があっても処理が可能であり、探索範囲の設定によって許容する誤差範囲を調整することができる。
  • 識別は、カメラと作物の距離が一定であれば、作業条件に応じて、条間、株間、探索範囲のパラメータを設定するだけで容易に行える。

成果の活用面・留意点

  • カラー画像でも処理できるが、作物とそれ以外の部分で分光反射率の差異が大きい近赤外画像の方が2値化が容易である。
  • 生育が進み隣接する株同士が重なりあったり、欠株位置に雑草があるときには誤認識する場合がある。
  • 葉柄の伸長程度によっては、1つの株が2つ以上の領域に分離して2値化されることがあり、株の位置と大きさが正確に認識できない場合がある。

具体的データ

図1.フーリエ級数による作物識別の手順

 

図2.カラー画像による識別の結果図3.株の推定位置

 

表1.近赤外画像による識別実験条件

その他

  • 研究課題名:インテリジェントアイによる作物識別技術の開発
  • 予算区分:軽労化農業
  • 研究期間:平成11年度(平成9~11年)
  • 研究担当者:村上則幸・井上慶一・宮浦寿美
  • 発表論文等:フーリエ級数を利用した画像処理による作物と雑草の識別方法,
                     第59回農業機械学会年次大会講演要旨集,2000.(発表予定)