DD、AFLP及び銀染色を組合わせたmRNAフィンガープリンティング(DD-AFLP)法

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要約

3'末端にpolyA配列をもつcDNA断片のみをPCRで選択的に、再現性よく増幅し、ラジオアイソトープや蛍光色素を使用せずに銀染色で検出できるDD-AFLP法は、経済的で効率の良いmRNAフィンガープリンティング法である。

  • 担当:北海道農業試験場・草地部・マメ科牧草育種研究室、地域基盤研究部・越冬ストレス研究室
  • 連絡先:011-857-9272 011-857-9382
  • 部会名:基盤研究
  • 専門:バイテク
  • 対象:牧草類 稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

遺伝子をクローニングする際のmRNAフィンガープリンティングの手法として、ディファレンシャルディスプレイ(DD)法とcDNA-AFLP法がある。DD法は、3'末端側のcDNA断片を選択的に増幅する手法として開発されたが、再現性が低いという短所がある。一方、cDNA-AFLP法は、再現性が高い長所があるが、目的以外のcDNA断片も増幅するので泳動ゲル中に多くの断片が含まれる。これらの手法においては、通常、ラジオアイソトープまたは蛍光色素による標識が必要となるため、実際の利用場面では、施設や機器による制限を受ける。再現性が高く、シンプルな泳動像に対し、銀染色の適用が可能になれば、遺伝子クローニング実験の実施可能範囲が拡大する。

成果の内容・特徴

  • DD法とcDNA-AFLP法を組合せると、再現性が高く、かつシンプルな泳動像が得られ、バンドの検出に銀染色の適用が可能となる。DD-AFLP法は、マニュアル化された手法の組合せであり、既存のキットが利用できる簡便なmRNAフィンガープリンティング法である。
  • 再現性が高い。AFLP法との組合せにより、DD法の再現性の低さが改善される(図1)。
  • cDNA断片の重複がなく、カタログ化が容易である。3'末端にpolyA配列をもつcDNA断片のみを増幅するため、同一mRNAに由来するcDNA断片は、ゲル上に一度しか現れない。また、ゲノムDNAの混入の可能性が低く抑えられる。
  • シンプルな泳動像が得られ、銀染色で検出可能である(図2)。増幅産物のサイズは50~700bp、レーンあたりの総バンド数は30~100本である。
  • cDNA断片の再増幅が容易である。銀染色したゲルからのcDNA断片の切出しが容易であり、再増幅が効率的に行える。100バンド以上単離し再増幅を行った結果、約65%がシングルバンドである。Oligo-dTプライマーとMse-Iプライマーの配列を含む目的のcDNA断片が増幅されていることがシークエンスにより確認された。低温ストレス前後および品種間で発現量が変化するcDNA断片をゲルから単離した結果、発現量の変化をノーザン法で確認できるものが含まれている。

成果の活用面・留意点

ストレス等により特異的に発現する遺伝子を効率よく安価にクローニングする方法として活用できる

具体的データ

図1.DD-AFLP法によるcDNA断片増幅のフロー

 

図2.DD-AFLP法により産出され、銀染色されたフィンガープリンティングゲルの例

その他

  • 研究課題名:
    「分子マーカーを利用した高度耐寒性・高生産力アルファルファの選抜」、
    「DNA多型を利用したアルファルファの遺伝資源の多様性ならびに耐凍性の解析に関する研究」、
    「生殖過程における低温ストレス応答機構」
  • 予算区分:バイテク先端技術研究(バイテク植物育種)、 STAフェローシップ、
                  科学技術振興調整費・総合研究(植物ネット)
  • 研究期間:平成11年度(平成8~11年)
  • 研究担当者:IVASHUTA, Sergey、今井亮三、内山和宏、我有 満、磯部祥子
  • 発表論文等:
    The coupling of differential display and AFLP approaches for nonradioactive mRNA fingerprinting.Molecular Biotechnology 12(2),,1999.