てんさいの低温処理による雄性不稔化手法

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要約

てんさいの交配に利用できる除雄技術として、開花期前の3°C50日処理による雄性不稔化手法を開発した。雄性不稔化に際し、AGP及びオリゴ糖の代謝が阻害されていることが判明した。

  • 担当:北海道農業試験場・畑作研究センター・てん菜育種研究室、品質制御研究チーム
  • 連絡先:0155-62-9271
  • 部会名:作物
  • 専門:育種
  • 対象:工芸作物類
  • 分類:研究

背景・ねらい

てんさいの新親系統育成のために自殖系統間で交配を行う場合、除雄が必要不可欠である。しかし、手作業による除雄は労力を要し、採種量も限られる。そこで、開花期前のてんさいに対して低温処理を行い、雄性不稔化させることにより除雄することを試みた。また、この雄性不稔化のメカニズムを明らかにするため、雄性不稔化と密接な関係が判明している葯内の糖質の消長を調査し、雄性不稔化との関連性を検討した。

成果の内容・特徴

  • 着蕾期のてんさいを3~5°Cで30~50日間処理することで、雄性不稔化できる(図1)。
  • オリゴ糖及びアラビノガラクタンプロテイン(AGP)の代謝が5°Cの処理により阻害され、オリゴ糖含量が低下していることが判明した(図2、図3)。
  • 本手法の低温処理は雌性器官には影響が少なく、採種が十分可能であり、種子の発芽にも問題は見られなかった(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 雄性不稔維持系統の育成に本法を活用できる。
  • 低温処理以降に形成される花は花粉稔性を持つため、蕾の切除が必要である。
  • 雄性不稔化に必要な低温処理期間には系統間差がある。

具体的データ

図1.低温処理と雄性不稔花率との関係

 

図2.無処理葯におけるAGPとオリゴ糖含量の変動図3.低温処理葯におけるAGPとオリゴ糖含量の変動

 

表1.低温処理材料のF1採種量

 

その他

  • 研究課題名:低温処理による雄性不稔発現メカニズムの解明と応用
  • 予算区分 :バイオデザイン計画シーズ養成研究
  • 研究期間 :平成10年度
  • 研究担当者:藏之内利和、川口健太郎
  • 発表論文等:着蕾期テンサイの低温処理による雄性不稔化、
                    育種・作物学会北海道談話会会報 39,1998.
                    低温処理で雄性不稔化したテンサイ葯の糖含量の変動について、同.