そば育種における4倍体を利用した隔離採種法

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要約

4倍体のそばを隔離帯として2倍体の系統間に栽植すると、虫媒による2倍体系統間の交雑を抑制でき、地理的隔離や隔離網に頼らない隔離採種が可能となる。

  • 担当:北海道農業試験場・畑作研究センター・遺伝資源利用研究室
  • 連絡先:0155-62-9273
  • 部会名:作物
  • 専門:育種
  • 対象:雑穀類
  • 分類:研究

背景・ねらい

そばは虫媒性の他殖性作物であるため、複数の系統を近接させ栽培すると、容易に系統間で交雑がおこる。しかしながら、2倍体そば系統間に4倍体そばを栽植すると、2倍体個体と4倍体個体の間の交雑がおこらないので、各々の2倍体系統を遺伝的に隔離することができる。この性質を利用した新規の隔離採種法について、現行の隔離法(隔離網室法や隔離圃場法)での対応が困難な,初中期世代の系統の増殖・選抜における有効性を検討した。

成果の内容・特徴

  • 当隔離法においては,増殖を目的とする2倍体系統のプロット間に,隔離帯として4倍体系統を栽植する(図1)。
  • 隔離帯の幅が7.2m(60cm畦幅×12畦)でプロット面積25.2m2(60cm畦幅×7畦×6m)の場合,用いる品種や試験年次による多少の変動はあるが,混淆率(他の系統の花粉により交雑し形成した種子の比率)は1~2%である(表1)。この程度の混淆は,イネやムギ等の自殖性作物でも報告されており,初中期世代のそば系統の増殖・選抜で許容される水準にあると考えられる。
  • 試験圃場内で通常に近い栽培条件で各形質の評価ができるため,系統間の比較や系統内の個体選抜の精度が高い(表2)。
  • 特に必要な資材等はなく,経済性に優れる(表2)。
  • 1プロット内に扱える個体数,面積あたりに栽培できる系統数とも比較的多い(表2)。具体的には,1プロットあたり1,000個体程度として20系統を増殖するのに,隔離圃場を用いる場合約12,000haに散在させるが,当隔離法では40aの圃場で対応できる。
  • 隔離効果は,隔離網室法,隔離圃場法より低いが,ヒルプロット法(当隔離法と同様の設計で,隔離帯に4倍体を栽植しない)より高い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 当隔離法は初中期世代のそば系統の増殖・選抜に利用でき,そば育種の効率化を可能にする。
  • 厳密な隔離は不可能なため,必要に応じ後代において異株抜きを行う。
  • 隔離帯とする4倍体系統の開花期間に,2倍体系統の開花期間が含まれる必要がある。

具体的データ

図1.4倍利用隔離法における系統の配置

 

表1.4倍体利用隔離法における種子混淆率

 

表2.他の隔離法との比較

その他

  • 研究課題名:そば育種における4倍体隔離法試験
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成8~9(10)年度
  • 研究担当者:船附秀行・船附稚子・我妻正迪
  • 発表論文等:
    • 船附秀行・丸山稚子・関村潔・我妻正迪、ソバ採種における隔離効果の評価、育種・作物学会北海道談話会報 第38巻:52-53(1997)
    • 船附秀行・船附稚子・我妻正迪、そば採種における4倍体利用による隔離の効果、日本育種・作物学会北海道談話会報 第39巻:135-136(1998)