牛乳中尿素窒素を指標とした泌乳牛の尿中窒素排泄量とDCP充足率の簡易モニタリング

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要約

牛乳中尿素窒素含量(MUN)を測定することにより簡易に泌乳牛の尿中窒素排泄量の傾向を知ることができる。また4%乳脂補正乳量(FCM)と組み合わせて、DCP充足率を推定することにより、精密な飼料設計が容易となり、FCM生産当たりの尿中窒素排泄量の低減化が可能となる。

  • 担当:北海道農業試験場・畜産部・生理・繁殖研究室、上席研究官
  • 連絡先:011-857-9269
  • 部会名:畜産・草地(畜産)
  • 専門:動物栄養
  • 対象:家畜類
  • 分類:指導

背景・ねらい

糞尿中窒素排泄量の低減化のためには飼料給与の適正化が最も重要である。現場において飼料設計診断を行うこともできるが、実際に消化吸収された窒素の有効性について簡易に判断する方法が必要とされる。このため尿中窒素排泄量やDCP(可消化粗蛋白質)充足率を簡易にモニタリングする指標として牛乳中の尿素窒素含量(MUN[mg/dl])に注目した。

成果の内容・特徴

  • 41例の泌乳牛の窒素出納試験成績から、尿中窒素排泄量(UN[g/day])はMUNと以下の関係がある(図1)。
      UN=11.23×MUN+35.15         (R2=0.582、n=41)(式1)
    また、4%乳脂補正乳量当たりの尿中窒素排泄量(UN/FCM)とDCP充足率(DCPi/r[%])については(図2)
      DCPi/r=62.959×(UN/FCM)0.4565    (R2=0.903、n=41)(式2)
    の関係が認められる。
  • DCP充足率が170%以下の34例においては、MUNとFCMの比とDCPの充足率は
      DCPi/r=193.4×(MUN/FCM)0.4225    (R2=0.730、n=34)(式3)
    の関係が認められる(図3)。この式の特徴は、MUN値を生産効率型の指標に変換することにあり、消化吸収されたDCPの生産への利用率が高ければMUN/FCMが低下し、生産に結びつかないDCPが多ければMUN/FCMが高くなる。従って、吸収蛋白の利用効率に関する簡易なモニタリング指標として利用できる。
  • FCM当たりの窒素排泄量は実際のDCP充足率と相関が高いが(図2、式2)、飼料設計上はCPのDCPへの変換効率が摂取量や飼料原料の性質により変化するため、事前にDCP充足率を十分に予測することは難しい。MUN値の測定によるDCP充足率の推定を加味することにより、精密な飼料設計が可能となる。

成果の活用面・留意点

  • 飼料中窒素の利用効率を含めた精密な飼料設計の一助となる。
  • 体蓄積を動員している状態では、DCPi/rが高めに推移することが予測される。またDCP充足率が170%を越える場合には精度が低下する。
  • FCM当たりのMUN値はCP充足率(CPi/r、%)よりもDCP充足率と高い相関関係にあるが、CP充足率を用いたい場合には次式を用いて推定することができる。
      CPi/r、=162.3×(MUN/FCM)0.2953    (R2=0.641、n=34)

具体的データ

図1.MUNと尿中窒素排泄量の関係

 

図2.4%FCM当たりの尿中窒素排泄量とDCP充足率の関係

 

図3.MUN/FCM比とDCP充足率の関係

 

その他

  • 研究課題名:乳用牛の糞尿中窒素排泄量低減化のための栄養管理技術
  • 予算区分:環境研究(家畜排泄物)
  • 研究期間:平成11年度(平成9年~11年)
  • 研究担当者:田鎖直澄・大谷文博・上野孝志・押尾秀一
  • 発表論文等:
    アルファルファサイレージを粗飼料源としたTMRへの澱粉添加が泌乳牛の尿中尿素排泄に及ぼす栄養、
    第95回日本畜産学会講演要旨、p31(1999)