アルファルファにおける雪腐黒色小粒菌核病抵抗性の品種間差異

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要約

圃場において根雪前に人工接種を行い、越冬後にアルファルファの萌芽期と草勢を評価することにより、雪腐黒色小粒菌核病に対する抵抗性検定が行える。抵抗性の品種間差異は大きい。

  • 担当:北海道農業試験場・草地部・マメ科牧草育種研究室
  • 連絡先:011-857-9272
  • 部会名:畜産・草地(草地)
  • 専門:育種
  • 対象:牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

北海道の多雪地帯では雪腐黒色小粒菌核病菌(Typhula ishikariensis)による被害が普遍的にみられる。十勝地方の多雪地帯では、土壌凍結地帯より越冬後のアルファルファの萌芽が遅く、収量が低い。また、近年、網走地方でも本病菌による半致死状態に近い被害が発生している。
登録薬剤がないこと、また、経済性の面から薬剤による防除が行えない牧草では、抵抗性品種による対応が必須である。そこで、抵抗性品種育成の前段として、圃場における人工接種により、アルファルファの抵抗性の品種間差異を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 5月に条播し、通常の栽培管理を行って育成したアルファルファ植物体に、ふすま・バーミキュライト培地で培養した本病菌(生物型A)を培地ごと根雪直前に畦1mあたり25g接種し、越冬後の萌芽期と草勢から抵抗性を判定する。試験を2回行ない、1991-92年の試験(1)に10品種、1994-95年の試験(2)に47品種を供試した。
  • 接種区での萌芽期と草勢の品種間差異から抵抗性を評価できる。無接種区では播種翌年の消雪時には、萌芽期の差を認めにくく、抵抗性の判定は困難である。一方、接種区では萌芽期に大きな品種間差異が生じるため、播種翌年に抵抗性が判定できる(図1)。
  • 検定結果は、異なる年次に行った2回の試験間で有意な相関(r=0.87**、n=9)を示し、再現性がある(図2)。
  • 接種によりアルファルファの萌芽期および草勢に大きな差異が生じ、雪腐黒色小粒菌核病抵抗性に対する品種間差異が明瞭になる(図3)。導入品種の中にも強いものがあり、育種素材として有用である(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 抵抗性品種の育成に活用できる。
  • 土壌凍結が発生しない多雪地帯に接種圃場を設置し、抵抗性検定を行う必要がある

具体的データ

図1.接種区と無接種区における萌芽の関係(試験2)

 

図2.2回の接種試験における評価結果の再現性

 

図3.接種区における萌芽期と春の草勢による47品種の抵抗性の差異(試験2)

 

表4.47品種の雪腐黒色小粒菌核病抵抗性の差異(試験2)

 

その他

  • 研究課題名:「アルファルファの多収・永続・耐病性品種の育成」
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成11年度(平成3~11年度)
  • 研究担当者: 内山和宏、山口秀和、澤井 晃、磯部祥子、我有 満
  • 発表論文:
    • アルファルファにおける雪腐黒色小粒菌核病ならびに菌核病の圃場接種による被害解析. 育雑43別2. 1993.
    • 圃場接種によるアルファルファの雪腐黒色小粒菌核病接種抵抗性検定. 育雑47別1. 1997.
    • Evaluation of resistance to speckled snow mold caused by Typhula ishikariensis in alfalfa inoculated in field