使用済脱硫剤の土壌施用によるジャガイモ炭そ病と指斑病の軽減

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要約

ジャガイモの植付け前に使用済脱硫剤を土壌施用することにより、炭そ病および指斑病による貯蔵中の陥没病斑の発生が軽減する。

  • 担当:北海道農業試験場・生産環境部・病害研究室 種苗管理センター・胆振農場
           東京農業大学・生物応用化学
  • 連絡先:011-857-9277
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:いも類
  • 分類:研究

背景・ねらい

北海道早来町内で生産されたジャガイモ塊茎において、貯蔵中の1996年春メークインに炭そ病による陥没病斑が、また1997年春サクラフブキに指斑病による陥没病斑が多発し、いずれも問題となった。同地域の土壌は粗粒砂土で塩基置換容量が低く、交換性カルシウムをはじめ塩基成分が極めて欠乏していることから、その供給源として使用済脱硫剤の施用を検討していたところ、これら病害が軽減する傾向がみられた。そこで、使用済脱硫剤を植付け前に施用し、ジャガイモの炭そ病および指斑病に対する軽減効果を調査するとともに、その要因の検討を行った。

成果の内容・特徴

  • 北海道電力苫東厚真発電所から脱硫装置の副産物(産業廃棄物)として排出される使用済脱硫剤は、石膏と石炭灰からなり多量のカルシウムを含んでいる(表1)。
  • 使用済脱硫剤の施用(1t/10a)により、土壌中の無機成分のうち交換性カルシウムと有効態ホウ素の濃度が増加する(図1)。
  • 作物体の無機成分は、カルシウム濃度が葉、茎、根、塊茎の各部位で増加し(図2)ホウ素濃度が主に茎葉で増加する傾向がみられる。硫黄濃度には変化がない。
  • 炭そ病による陥没病斑の発生が明らかに減少する(図3)。
  • 指斑病による陥没病斑の発生も炭そ病と同様に減少する(表2)。
  • 石膏と石炭灰をそれぞれ施用すると、石膏には使用済脱硫剤と同様の軽減効果が認められるが、ホウ素を含む石炭灰に軽減効果は認められない(表2)。したがって、使用済脱硫剤施用によるこれら病害の軽減効果は、カルシウムによると考えられる。
  • 本試験では、使用済脱硫剤の施用による生育及び塊茎への障害、土壌pHの変化は認められないが、むしろ増収効果がみられる。

成果の活用面・留意点

  • 塩基成分の欠乏した砂土における1t/10aの施与では、土壌pHへの影響および生育障害は認められなかったが、作物体のカルシウムとホウ素濃度が増加することから、後作物への影響を考慮し、土壌分析を行って適切な量を施用する。
  • 使用済脱硫剤の含有成分量が安定していないことから、施用前に品質の確認を行なう。

具体的データ

表1.使用済脱硫剤の性状代表例

 

図1.土壌中の交換性カルシウム及び可給態ホウ素濃度

 

図2.塊茎中のカルシウム濃度 図3.使用済脱硫剤施用による炭そ病の被害軽減効果

 

表2.各資材の施用が指斑病の発生に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:ジャガイモ貯蔵病害の防除法の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成11年度
  • 研究担当者:内藤繁男、大石顕一・三木信雄・上田実・福田豊(種苗管理センター)、
                    牛木純・近藤史(東京農大)
  • 学会発表等:ジャガイモ指斑病の発生に及ぼす使用済脱硫剤の影響、日植病報65:352,1999;
                    ジャガイモ品種「サクラフブキ」の指斑病発生に及ぼすホウ素およびカルシウム肥料の影響、
                    日植病報65:359,1999;使用済脱硫剤およびカルシウム肥料の施用 がジャガイモの品質と
                    収量に及ぼす影響、日本土肥学会講演要旨集45:238;1999