ばれいしょの葉柄汁液を用いた栄養診断

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要約

ばれいしょにおいて、葉柄汁液の硝酸態窒素、リン濃度はその栄養状態を良く表し、診断指標として有効である。生食用品種男爵薯、キタアカリで、着蕾期の硝酸態窒素濃度が1.3~1.5 gL-1、リン濃度が100 mgL-1程度で十分な収量、品質が得られる。

  • 担当:北海道農業試験場・生産環境部・養分動態研究室
  • 連絡先:011-857-9243
  • 部会名:生産環境
  • 専門:肥料
  • 対象:いも類
  • 分類:研究

背景・ねらい

汁液を用いた作物の栄養診断は、(1)収量の安定化、(2)品質の向上、(3)環境負荷の軽減を目的とした養分管理手法であり、施設野菜や花卉などで研究、開発が行われてきた。環境保全的な作物生産のためには、今後、多くの作物で体系的に汁液診断の指標値を作成し、診断情報を蓄積していく必要がある。本研究はばれいしょを対象として、汁液の特性を明らかにするとともに、診断基準値を得ようとするものである。

成果の内容・特徴

  • ばれいしょ葉柄汁液の特性として、採取された汁液が葉柄全重に占める割合は22~37%であり、汁液中の硝酸態窒素濃度は葉柄の硝酸態窒素濃度とほぼ等しく(表1)、汁液中の無機リン濃度は葉柄の水溶性無機リン濃度より低い(表2)。
  • 汁液中硝酸態窒素およびリン濃度は地上部全窒素、全リン含有率との相関が高く、作物体の栄養状態を良く表す。汁液中硝酸態窒素濃度は着蕾期、開花期ともに窒素施用量を反映し(図1)、汁液中リン濃度は着蕾期のみリン施用量を反映する(図2)。
  • 汁液中硝酸態窒素濃度は一株内の茎間、葉位間で変動した。汁液採取には、数株について、一株中の第2茎のすべての葉柄をサンプルとする。または、一株中のすべての茎で10cmに達した上から3~5葉位の葉柄をサンプルとする(データ省略)。
  • 十分な収量を得るために、着蕾期葉柄汁液の硝酸態窒素濃度は1.3~1.5 gL-1、リン濃度は100 mgL-1程度が望ましい(図3、4)。品質面でも、硝酸態窒素濃度1.5 gL-1以上になると男爵薯でデンプン価14以下になるものが出現する(図5)。
  • リンの簡易分析法として、小型反射式光度計の試験紙を用いる方法(RQflex法)およびセルを用いる方法(RQflex plus法)は精密分析値との間にそれぞれ r=0.973、0.985の相関があり、ともに利用可能である。汁液を静置し上澄液を希釈することによって測定できる(データ省略)。

成果の活用面・留意点

  • 一般に、北海道のばれいしょ栽培では、養分供給量の不足より過剰が問題となる場面が多い。着蕾期の硝酸態窒素濃度が1.5 gL-1を越えるような資材の投入は控える必要がある。
  • 着蕾期のリン濃度100 mgL-1以上は好気象条件で得られ、リン施用量の増加のみで得られるものではない。

平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分 課題名:バレイショの葉柄汁液を用いた栄養診断(研究参考)

具体的データ

表1.汁液と葉柄の硝酸態窒素濃度の比較

 

表2.汁液と葉柄のリン濃度の比較

 

図1.汁液中NO3-N濃度の処理間差

 

図2.汁液中P濃度の処理間差

 

図3.汁液中NO3-N濃度と塊茎収量

 

図4.汁液中P濃度と塊茎収量

 

図5.汁液中NO3-N濃度とデンプン価

 

その他

  • 研究課題名:作物汁液の無機および有機成分分析による栄養診断および生体・培地管理手法の開発
  • 予算区分:総合的開発計画(軽労化農業)、経常
  • 研究期間:平成11年度(平成9~11年度)
  • 研究担当者:建部雅子、笠原賢明、唐澤敏彦
  • 発表論文等:バレイショ栄養診断のための汁液の特性と診断指標,土肥学会講演要旨集,45,151,1999