超強力粉のパンへの新利用技術

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要約

超強力粉を冷凍生地製パンやブレンドによる国産小麦粉の製パン性向上に使用した場合、比容積の大きい良好なパンが得られる。これらの特性が超強力粉にある理由は、超強力粉生地が非常に強い生地物性とガス保持性を持っているためである。

  • 担当:北海道農業試験場・畑作研究センター・流通システム研究チーム、麦育種研究室、
           品質制御研究チーム
  • 連絡先:0155-62-9283
  • 部会名:流通利用
  • 専門:加工利用
  • 対象:麦類
  • 分類:研究

背景・ねらい

超強力粉とは、カナダで1つの小麦銘柄として成立している Canada Western Extra Strong Wheat (CWES)のような超強力小麦から得られる小麦粉のことである。この小麦粉の特長は、生地ミキシング時の生地形成時間が非常に長い、生地物性が非常に強い、還元剤に対する抵抗性を持っている等である。この特徴的な小麦粉を上手にパンに利用する技術を確立すれば国産小麦のパンへの需要拡大が期待できるため、現在合理化製パン法として注目されている冷凍生地製パン法適性や国産小麦の製パン性向上のためのブレンド粉適性について検討する。

成果の内容・特徴

  • 超強力粉(Wildcat)の冷凍生地からのパンは、冷凍経時で市販強力粉(日清製粉、カメリヤ)の冷凍生地からのパンに比べ高い比容積を維持し、冷凍生地製パン適性がある(図1、図2)。
  • 超強力粉(Wildcat)に冷凍生地適性がある理由は、冷凍無の超強力粉の生地の破断力(弾性の強い生地物性)、ガス保持性(真空生地膨張量の値の高い生地ほどガス保持力高い)が非常に高く、冷解凍後それらの値は低下はするが、市販強力粉に比べ比較的高い値を維持しているためである(図3、図4)。
  • 国産強力粉(春のあけぼの)に比べ超強力粉(Victoria INTA)を適当量国産中力粉(ホクシン)、準強力粉(ハルユタカ)にブレンドすることによって、比容積、製パン性が外国産パン用粉(HRW、1CW)と同程度まで向上する(図5、図6)。
  • 超強力粉(Victoria INTA)のブレンドによって、国産小麦粉の製パン性が向上する理由は、生地の破断力、ガス保持性が向上するためである(図7、図8)。

成果の活用面・留意点

  • 超強力粉を用いた冷凍生地製パン法により、冷凍長期にわたり高品質のパンを提供することが可能である。
  • 適当量超強力粉をブレンドすることによって、国産小麦のパンへ利用拡大が期待できる。
  • 超強力粉100%の生地では、生地形成のためのミキシング時間が通常の強力粉の2倍程度必要である。

平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分 課題名:超強力粉のパンへの新利用技術(研究参考)

具体的データ

図1.比容積に対する冷凍期間の影響

 

図2.冷凍4週目のパンの内相

 

図3.生地破断力に対する冷凍期間の影響 図4.真空生地膨張量(ガス保持力)に対する冷凍期間の影響

 

図5.ブレンド小麦粉の製パン比容積

 

図6.ブレンド小麦粉の製パン結果

 

図7.ブレンド小麦粉生地の破断力 図8.ブレンド小麦粉生地の真空生地膨張量

 

 

その他

  • 研究課題名:品種・系統別小麦生地の冷凍耐性評価とその耐性機構
                     高蛋白春秋小麦品種・系統のブレンドによる製パン性等加工適性の安定化技術
  • 予算区分:総合的開発研究(新用途畑作物),総合的開発研究(麦緊急開発)
  • 研究期間:平成11年度(平成8~11年)
  • 研究担当者:山内宏昭・一ノ瀬靖則・高田兼則・桑原達雄
  • 発表論文等:
    • 冷凍生地食パンの老化に関する速度論的解析:日本食品科学工学会第44回大会講演集,p128(1997)
    • 超強力小麦粉の冷凍生地特性について:日本食品科学工学会第45回大会講演集,p202(1998)
    • 超強力粉ブレンドによる低製パン性小麦粉の改質機構:日本食品科学工学会第46回大会講演集,p171,p173(1999)
    • 冷凍生地製パン法とこの製法で得られるパン類(特許出願中)
    • リミックスストレート法冷凍生地製パン法(特許出願中)
    • 超強力小麦粉含有改質小麦粉とそれを用いた小麦粉食品(特許出願中)