水稲乾田直播における高タンパク質種子の初期生育促進効果と生産方法

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要約

タンパク質含有率9%以上の高タンパク質種子を利用すると寒地の乾田直播水稲の初期生育を促進できる.また,高タンパク質種子は出穂期に,淡色黒ボク土及び灰色低地土では10kg/10a,泥炭土では5kg/10aの窒素追肥により生産できる.

  • 担当:北海道農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム
  • 連絡先:011-857-9300
  • 部会名:総合研究
  • 専門:栽培
  • 対象:稲類
  • 分類:普及

背景・ねらい

水稲の寒地乾田播種早期湛水栽培(乾田直播)における発芽,苗立ちの良否は,収量に大きく影響を与える要因であり,発芽,苗立ち安定化法の開発が求められている.これまでに,寒地乾田直播において,タンパク質含有率の高い種子(高タンパク質種子)の利用により,発芽,苗立ちを向上できることを明らかにしたが,ここでは,高タンパク質種子の初期生育促進作用と高タンパク質種子の効果的な生産方法について検討する.

成果の内容・特徴

  • 播種深度が異なる条件下で,高タンパク質種子は草丈及び葉齢を促進することができる.特に播種深度が1cmより深い場合にその効果は顕著である(図1).
  • 乾田直播の栽培体系下で機械播種を行った場合,高タンパク質種子は初期生育を促進することができる(図2,3).特に,草丈,乾物重の促進効果が大きい.
  • 初期生育の促進効果及び苗立ちの向上効果は,種子中のタンパク質含有率が9.2%,9.6%,9.9%の時に認められ,効果発現のためのタンパク質含有率は9%以上が必要である(図4).
  • タンパク質含有率9%以上の種子を生産するためには,窒素施用量の合計で淡色黒ボク土及び灰色低地土水田の場合には20kg/10a,泥炭土水田の場合には10kg/10aの施用が必要である(図5).
  • この場合,基肥半量に加えて出穂期に半量の追肥を行うことにより,倒伏等を抑え栽培管理しやすく効果的に高タンパク質種子を生産できる.

成果の活用面・留意点

  • 寒地の乾田直播水稲の初期生育を促進でき,苗立ちの向上につながる.
  • 窒素施用による倒伏,病害発生,成熟期の遅れ,また後作の肥培管理に留意する.
  • 乾田直播で用いられている品種「ゆきまる」に適用する.
  • 本情報は「種子内窒素は水稲幼植物の生育を速め苗立ちを向上させる」(北陸農業研究成果情報 第14号)及び特許第3044295号「水稲種子の生産方法」に基づき,寒地の乾田直播向け技術として開発したものである.特許許諾については北陸農業試験場企画科(0255-26-3212)に問い合わせる.

平成12年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分 課題名:タンパク質高含有率種子を利用した乾田直播水稲の苗立ち安定化法(指導参考)

具体的データ

図1.播種深度が異なる時の高タンパク質種子と普通種子の生育の比較

 

図2.高タンパク質種子と普通種子の生育の比較

図3.高タンパク質種子と普通種子の生育の比較

図4.タンパク質含有率が苗立ち及び草丈伸長に及ぼす効果

図5.窒素施用量と種子中のタンパク質含有率との関係

その他

  • 研究課題名:水稲乾田播種早期湛水栽培を中核とする寒地の大規模稲麦栽培体系の実証
  • 予算区分 :実用化促進(地域総合)
  • 研究期間 :平成12年度(平成8~12年度)
  • 研究担当者:湯川智行・粟崎弘利・渡辺治郎・大下泰生
  • 発表論文等:水稲の寒地乾田直播栽培技術の評価 日作紀69(2):32-33.