寒地の乾田直播栽培適地判定のための支援マップ

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要約

播種から出穂までの乾田直播水稲の有効積算温度、アメダス気温データ、土壌メッシュデータ、長期積雪メッシュデータ等を用いて作成した1kmメッシュの乾田直播栽培適地判定支援マップを利用することにより、適地性の評価が可能である。

  • 担当:北海道農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム企画連絡室・研究技術情報科
  • 連絡先:011-857-9300
  • 部会名:総合研究
  • 専門:栽培
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

寒地の乾田直播は、移植栽培に比べて土壌や温度条件の影響を強く受けるので、立地条件の適切な評価や予測あるいは留意すべき技術上の問題点の明確化などが極めて重要となる。そこで、各種データベースを活用して直播適地判定支援マップを作成する。

成果の内容・特徴

  • 温度条件から見た乾田直播の適地性を評価するため、直近の3~4カ所のアメダスデータから当該メッシュ(1km四方)の日平均気温を求める方法により、過去20年について以下の計算を行った。
    (1)出穂晩限を、出穂期以後40日間で積算気温750℃が得られる最晩日とする。
    (2)日有効温度を以下の近似式により算出し、5月1日~出穂晩限までを積算して、有効積算温度を求める(日有効温度y=-0.0053x3+0.2746x2-2.9276x+9.17、x:日平均気温(x>7℃))
    (3)水稲品種「ゆきまる」の播種から出穂に必要な有効積算温度は、1068℃、標準偏差は76.7℃である(表1)ことから、乾田直播の適地性を以下のように区分出来る。
    I:900℃以下(直播栽培は困難)、
    II:900~1000℃(困難、生育促進技術の開発で可能性有り)、
    III:1000~1100℃(可能であるがやや不安定、栽培技術の厳守が必要)、
    IV:1100~1200℃(安定)、
    V:1200℃以上(安定、条件によっては中生の良食味品種直播栽培の可能性あり)
    (4)有効積算温度の再現期間3年および5~20年まで5年ごとの値を求め、上記3)によるマップを出力した。再現期間5年が温度条件から見た適地判定支援マップとして妥当である(図1)。
    (5)出芽期の温度条件は直播水稲の発芽・苗立ちに大きく影響することから、以下の式により出芽期有効温度を算出する(日有効温度(y)=-8.87+0.80T T:日最高気温、粟崎)。乾田直播の発芽・苗立ち安定性から、5月1日~5月31日の積算出芽期有効温度を用いた乾田直播の適地性を以下のように区分する。
    I:100℃以下(困難)、
    II:100~120℃(可能だがやや不安定)、
    III:120℃以上(安定)
  • 播種早限は根雪終日に影響される。圃場乾燥技術の進歩から消雪後20日目には播種作業が可能となっている(表2)。北海道の長期積雪メッシュデータ(http://joho1.cryo.affrc.go.jp/sekisetsu/)から再現期間5年の根雪終日メッシュデータを用い以下のように適地性を区分する(表3)。
    I:4月25日以降(困難)、
    II:4月15日~25日(可能、やや不安定)、
    III:4月15日以前(安定)。
  • 土壌の透水性から見た乾田播種早期湛水栽培(乾田播種)の適用条件として日減水深30mm以下としている。透水性の土壌メッシュデータは存在しないため、ここでは泥炭土を除く土壌のうち中層(深さ15~30cm)の透水性が大のメッシュを不適地とする(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 乾田直播の普及および技術開発目標を設定する際の参考になる。
  • 温度条件は品種「ゆきまる」を対象としている。

具体的データ

表1.水稲品種「ゆきまる」の播種~出穂までの有効積算温度

図1.温度条件からみた石狩、空知、上川南部地域の再現機関5年間の乾田直播の難易性区分図

表2.消雪~播種の所用日数

表3.稲作地帯区分ごとの再現期間5年の根雪終日)

 

その他

  • 研究課題名:寒地における水稲直播適地判定支援マップの作成
  • 予算区分 :経常(地域総合)
  • 研究期間 :平成10~12年
  • 研究担当者:渡辺治郎、岩田幸良・粟崎弘利、大下泰生、湯川智行