断熱筒状発酵槽を備えた堆肥化実験装置

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要約

側面を断熱した筒状発酵槽を備えた堆肥化実験装置を開発した。装置の発酵槽は、実際の堆肥化施設における材料堆積高さと同等の高さを有し、従来の実験装置に比べて、実際の堆積状態により近い条件で、堆肥化実験を行うことができる。

  • 担当:北海道農業試験場・作物開発部・農地農業施設研究室
  • 連絡先:011-857-9233
  • 部会名:総合研究(農業物理)
  • 専門:農業施設
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

一般に大量の堆肥材料を用いた堆肥化実験は、要する労力が大きい他、材料の均質性や温度条件を揃えることが困難である。できるだけ少量の材料で実験を行えることが望ましいが、少量の材料では、材料の発熱量に対する放熱量の割合が大きく、材料温度の上昇が小さくなり易い。このため従来から、少量材料の堆肥化実験には、発酵槽の断熱を厳重にした実験装置が用いられている。しかし従来の実験装置は、堆積堆肥材料の自重による下層部の圧縮、通気による熱と水分の移動、通気空気の材料通過過程での酸素濃度の変化、上端表面での外気との接触など、実際の堆肥化施設における現象が十分に再現されない。そこで、より実際に近い条件で実験を行うことができる堆肥化実験装置を開発した。

成果の内容・特徴

実際の堆肥化施設で、均一に堆積された材料が平面的に一様な発酵状態にあるとき、水平方向には熱・水・空気および材料の移動はわずかであり、ないものと見なすことができる。このため、堆積材料の一部を柱状に切出した状態をつくれば、その少量の柱状試料で実際を再現できるとの考えが、本実験装置開発にあたっての基本である(図1)。

装置の発酵槽は、円筒容器の周りを高さ方向に数段の断熱ユニットで覆ったものである。断熱ユニットは、円筒容器を包む保温材の外側を面状ヒータで巻き、さらにその外側を保温材で覆った構造である。面状ヒータの発熱量は、各断熱ユニット毎に独立に、内側保温材の外周部が内周部よりわずかに低温になるよう制御される(図2、写真1)。

装置の発酵槽は、実施設における材料堆積高さと同等の高さを有し、実施設に堆積された状態を再現しながら堆肥化実験を行うことができる(表1、図3)。

 

成果の活用面・留意点

各種の堆肥化実験を効率的に行うために利用できる。発酵槽の内面や材料中に温度センサ等を設置する場合には、堆肥化過程での材料の沈下を妨げないようにすることが望ましい。装置を恒温室内で利用すれば、実験の再現性をより高めることができる。

具体的データ

図1.施肥化実験装置開発にあたっての考え方

 

図2.施肥化実験装置の構造

 

写真1.実験装置を恒温室内で用いた施肥化実験

 

表1.本装置と従来装置の機能比較

 

図3.実験装置を用いた施肥化実験の結果例

その他

  • 研究課題名:寒冷地における家畜糞尿の堆肥化促進技術の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成12年度(平成10~12年)
  • 研究担当者:向 弘之