花粉の生育と低温傷害に関与する糖質分解酵素活性

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要約

イネの雄しべに蓄積するアラビノガラクタンプロテイン及びアラビノガラクトオリゴ糖の代謝を制御する酵素活性の存在を発見した。この活性は雄しべの生長に伴って変化する。

  • 担当:北海道農業試験場・畑作研究センター・品質制御研究チーム
  • 連絡先:0155-62-9278
  • 部会名:基盤研究
  • 専門:生理
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

イネの冷害(障害型冷害)は花粉の退化が原因であり、低温に感受性の高い花粉の発育時期は、小胞子初期(四分子.小胞子前期)である。その雄性不稔化の生理的機作を明らかにするため、花粉の生育と退化に関連すると思われるアラビノガラクタンプロテイン(AGP)代謝機構におけるキー酵素を発見する。

成果の内容・特徴

  • AGPを分解しオリゴ糖を生成する酵素の活性は、雄しべ特異的AGP及び雄しべタンパク成分の反応により生じる糖の検出により測定できる(図1)。
  • 小胞子初期のイネの雄しべにはAGP分解酵素活性が時期特異的に発現し、その活性変動パターンはオリゴ糖蓄積パターンに一致する(図2)。
  • 上記結果は、本酵素がAGPとオリゴ糖の代謝を制御するキー酵素であることを示し、その特性解析により花粉の生育と低温による退化の生理生化学的機構の解明が期待できる。

成果の活用面・留意点

本知見は作物全般に応用可能であり、豆類、麦類等に見られる障害型不稔の生理生化学的機構の解明にも活用できる。

具体的データ

図1.酵素活性の測定フロー模式図

 

図2.花粉のAGP代謝の発育ステージに伴う変動

その他

  • 研究課題名:生殖細胞の発生におけるアラビノガラクタンプロテイン関連糖鎖の機能解明
  • 予算区分:先端技術開発研究(糖質工学)
  • 研究期間:平成12年度(平成9~12年)
  • 研究担当者:川口健太郎
  • 発表論文等:
    ・Kawaguchi K. and Shibuya N.(2000) Characterization of arabinogalactan-proteins and a related oligosaccharide
      in developing rice anthers. In Cell and Developmental Biology of Arabinogalactan-Proteins.Kluwer Academic /
      Plenum Publishers, New York, pp149-152.
    ・川口健太郎、渋谷直人(2000)「イネ葯アラビノガラクタンプロテインとその分解活性の解析」
      日本植物生理学会講演要旨集 p227