インディケータ情報の利用による泌乳形質の遺伝的改良の効率化

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

育成期に絶食後グルコース投与したときの血漿成分をインディケータ情報として,泌乳記録を持たない個体の遺伝的能力推定の際に血縁個体の情報に加えることで,選抜の正確度(遺伝的能力とその推定値との相関係数)を高め,牛群の遺伝的改良速度を向上させる。

  • 担当:北海道農業試験場・畜産部・家畜育種研究室
  • 連絡先:011-857-9270
  • 部会名:畜産・草地(畜産)
  • 専門:育種
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

育成期に泌乳形質と強い遺伝相関を持つ形質(インディケータ形質)を見つけることで,泌乳記録を持たない育成牛の泌乳形質の選抜の正確度を高め,遺伝的改良速度の向上を図る。

成果の内容・特徴

  • 泌乳記録を持たない個体において,インディケータを用いずに血縁関係からの泌乳形質の情報のみで遺伝的能力を推定した場合,乳量,乳脂量,乳タンパク質量の選抜の正確度は,それぞれ0.48,0.50,0.46である。これにインディケータ情報(40日齢の37頭(雌20,雄17)に24時間絶食後グルコースを血中投与したときの血漿中成分濃度および濃度変化量)を加えたときの正確度の上昇率(%)は,それぞれ0~94,-2~58,-2~98を示す()。
  • 頭数100頭規模の一般的牛群の選抜の正確度は,乳量,乳脂量,乳タンパク質量でそれぞれ0.60,0.62,0.56である。これにインディケータを加えることで,選抜の正確度の上昇率(%)は乳量で8~43,乳脂量で2~27,乳タンパク質量で9~45を示す。
  • 年当たりの遺伝的改良量は,他の条件が同じ場合,選抜の正確度に比例することから,育成期に絶食負荷して血漿成分を測定することで,牛群の泌乳形質の遺伝的能力の改良速度を高められる。

成果の活用面・留意点

  • 泌乳記録を持たない育成牛のより正確な選抜基準を提供する。
  • 選抜の正確度上昇率の数字は北農試牛群のデータのみにより計算されているため,他牛群では多少の変動が予想される。

具体的データ

表.選抜の正確度の上昇率(%)

 

その他

  • 研究課題名:乳牛の育成期選抜のためのインディケータの探索
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成8~12年度
  • 研究担当者:佐々木修,富樫研治,山本直幸
  • 発表論文等:
    • 泌乳能力予測のためのインディケータ形質測定条件.日本畜産学会報,68(9),p843-852(1997)
    • 5ヶ月齢時の絶食による血中代謝成分濃度変化量と乳量の育種価との関係.日本畜産学会報,69(5),p450-459(1998)
    • 血縁情報が不完全なホルスタイン種牛群における泌乳形質の育種価の推定.日本畜産学会報,70(8),pJ97-J105(1999)