新生子牛の胎便成分の特性と初乳中β-カロテンの役割

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要約

子牛の胎便成分は粗蛋白質と粗脂肪の割合が高いが、繊維成分、マグネシウム、鉄は非常に少ない。初乳中β-カロテン含量が少ないと6日齢の子牛の血漿中β-カロテン濃度が低くなり、β-カロテンの不足が子牛の軟便・下痢状態の発生に関与している可能性がある。

  • 担当:北海道農業試験場・畜産部・飼料評価研究室
  • 連絡先:011-857-9236
  • 部会名:畜産・草地(畜産)
  • 専門:動物栄養
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

新生子牛の生存率は飼養管理の改善などにより向上しつつあるものの、疾病が原因で生じる子牛の増体率の低下などは現在でも乳牛の生産性低下をもたらす要因の一つである。新生子牛は健康維持に必要な栄養成分を妊娠末期には胎盤経由で、また出生後は初乳経由で摂取しているが、母牛から新生子牛への栄養成分の移行については未解明の部分が多い。そこで、新生子牛の健康維持と子牛の胎便・血液成分、母牛の初乳成分の関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 出生直後の胎便と6日齢の糞は粗蛋白質と粗脂肪の割合が高く、繊維は非常に少ないが、ミネラルでは出生直後にマグネシウムと鉄含量が極度に低い(表1)。
  • 糞中乾物含量20%以下を軟便・下痢状態とみなすと、106頭の子牛で糞中乾物含量が20%以下の子牛は出生直後では5頭なものの、6日齢では23頭に増える。
  • 初乳中のβ-カロテン含量が少ないと6日齢の子牛の血漿中β-カロテン濃度が低くなり、また子牛の血漿中β-カロテン濃度が低いと糞中乾物含量も低下することから、初乳由来のβ-カロテン摂取量の不足が子牛の軟便・下痢状態の発生に関与している可能性が示唆される(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 新生子牛の出生直後における栄養状態に関する基礎データとして活用できる。

平成12年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:新生子牛の胎便成分の特性と初乳中β-カロテンの役割(研究参考)

 

具体的データ

表1.新生子牛の糞中成分の変動

 

 

図1.初乳中β-カロテン含量と6日齢の子牛の血漿中β-カロテンの関係と6日齢の子牛の血漿中β-カロテンと糞中乾物含量の関係

その他

  • 研究課題名:母牛の血中代謝成分の胎盤・初乳経由による新生子牛への移行特性の解明
  • 予算区分:科・重点基礎
  • 研究期間:平成12年度
  • 研究担当者:久米新一,大下友子, 野中和久
  • 発表論文等:Effect of colostral β-carotene and vitamin A on vitamin and health status of newborn calves.
                      Livestock Production Science. 68:61-65. 2001.